SSブログ

「厳格な変奏曲」 [洗足学園のピアノ講座]

毎年2回続けてきた洗足学園音楽大学のピアノ講座、私ももうすでに定年になっているので、この先いつまで続けられるかわかりませんが、毎回、全力投球でやってきて、このおかげで私自身もずいぶん成長できました。

最近はベートーヴェンのハンマークラヴィアソナタのフーガの分析など、ときにはずいぶん難しいものも題材として取り上げ、ふだん滅多に聞けない講座にしよう、とあまり人気にこだわらずこの年の人間としてぜひ後輩に伝えておきたいことをお話ししてきました。それは普通のピアニストのとらえ方とも、理論家のとらえ方ともまた違った音楽の探り方を心がけています。

今回はメンデルスゾーンの「厳格な変奏曲」を取り上げます。メンデルスゾーンはお金持ちの息子で恵まれた環境にあったせいか、音楽に深みがかける、という評価が強いようですが、私は若い頃からメンデルスゾーン大好き人間として、その直截な音楽に魅せられています。

メンデルスゾーンを読み解くカギは「歌謡性」「フーガ」「コラール」この3つにあると思います。もう一つ、ユダヤ教からキリスト教に改宗した複雑な背景を持つ家系の一人としての音楽家として、その音楽に宗教的な深い陰を投げかけていることも見逃せません。

以上のような背景を知ってこそ、メンデルスゾーンの素顔と音楽の本質に迫れるのではないかと思います。タイトルの「厳格な変奏曲」の「厳格」は単なる曲のムードをあらわしたものではなく、メンデルスゾーンのもっとも深い宗教的心情から発せられたメッセージと私は考えます。

    6月21日(木)18:10 洗足学園大學Bリハーサル室
    誰でも入場できます、入場無料、たたし楽譜はご持参ください。


nice!(0)  コメント(3)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 3

makkie60

日本人はともすれば、宗教に関しては”信教の自由”とかで、却って”無知”に近い考えを持っているような気がします。昔、ドイツに留学してカトリックとプロテスタントとの未だに拭えない”溝”を痛感しました。住んでいたケルン市は、プロテスタントを標榜する国、州の中にあっても、堂々とカトリックをあの凄いDOMEと共に示していました。と同時にこの都市ではMENDELSSOHNは先ず”禁止”でした。後年日本で、弟子に”荘厳なる変奏曲”を与え、それが結構好評で何とカトリック都市WIENで演奏と相成った折、少々迷ったのですが思い切って弾かせました。案の定、評論家の方々にはボロクソだったようですが、一般聴衆には”余り聴けない珍しいステキな曲を有り難う”と言われた由。指揮者バレンボイムが、故国イスラエルでWAGNERを演奏するのに、相当の反発があったりと、西洋音楽には東洋人の私たちが理解できない”溝”って結構多いような気がします。マ、余りこんな背景ばかり追っかけても仕方無いと思うけれど、少しは知っておいてもと思ったり・・・・・店子マッキー
by makkie60 (2007-05-23 00:19) 

K.さん

厳格なる変奏曲は私にとって思い出の深い曲です。
芸大の入学試験もこれ弾いたし・・・
芸大でヘルヴィッヒ先生の公開講座があったときも、
この曲を弾かせて頂いたし・・・

その後も、国際コンクールで何度か弾きました。

高校生のときに弾き始めたときは
大変だったけど、
未だに何度も弾き直したり
最近は教えたりして、
生涯通じて学んでいる、思い出深い曲です・・・

今思い返すと、
この曲と長い縁があって良かったなと
思う曲なのです。
by K.さん (2007-05-23 04:32) 

klaviermusik-koba

いまだにメンデルスゾーンという作曲家はきちんとした評価なされていません。ドイツでは遅まきながらその反省もだいぶんでてきているようですが、日本はそこまでまだいっていなくて、作品、それも重要なものが知られていない。と思っています。
by klaviermusik-koba (2007-05-24 12:07) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。