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ポストホルン [メルクリン・音楽]

ポストホルン、という響きには音楽家にとってロマンティックなイメージがある。多くの音楽好きのひとは多分シューベルトの「冬の旅」の中の「Die Post」という曲を思い浮かべるだろうし、モーツアルトのシンフォニー「ポストホルン」を思い浮かべるひともあろう。シューベルトのDie Postは「郵便馬車」と訳されていることが多いがこれは名訳というべきだろう。来るはずのない恋人からの手紙を待ちかねて、「ポストホルン」の響きを聞くと、「なぜ私の胸はこんなに高鳴りを覚えるのだろうか」という若者のつぶやきが、ピアノの左手が馬の蹄の音を、ホルンの音が右手の付点のリズムで素晴らしく表現されている名曲である。この舞台設定は多分田舎のぼろい馬車にちがいないから、ここはピアニストは、がたぴしと少しかっこわるく、田舎っぽく弾かなければいけないのだが、ピアニストによっては少し勘違いして、さっそうとかっこよく弾くのを時々見受けるがそれではダメなのだ。

 ドイツの郵便局はまさにこのポストホルンがシンボルであったのだが、近代化とともに、少しデザイン化され、最近さらにイメージから遠ざかっているのは残念というしかない。はじめて私がドイツでこのポストのマークを見たとき、何とも言えない古くから知っている友人に突然であったような懐かしさを覚えた。

 ところでこのメルクリンの貨車に乗っている郵便自動車は自動車になってからも馬車のイメージがまだ色濃く残るスタイルだが、いかにも凹凸の多い石畳をがたぴし走る光景を彷彿とさせる。もちろんいくら私が年寄りでも実物を見たことはあるわけない。とはいえ、私は実物のポストホルンを所有している。自分では吹けないが、現代の大型で性能のいいホルンに比べてずっと小型で、(ポストホルンは馬をあやつる御者が片手で吹きならすから大型の楽器ではだめなのだ)この自動車にはそのホルンの絵がかなりリアルに描かれているはずだが、メルクリン製品では小さすぎて残念ながら確認は出来ない。
(ポストホルンにもいろいろ形や大きさの違いもあり、飾りもついていてヴュルテンベルクの自動車の絵がホルンに似ていなくてもにわかに判断しかねるところもあります)


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コメント 8

Akira

折角同じモデルのレビューを書いているのでトラックバックさせていただきました。音楽からの視点での考察は私も大変勉強になります。
写真の自動車モデルのものは、Wuerttemberg王国郵便の運営なので、もしかしたらポストホルンのマークはないかも知れません。ドイツが統一し郵便も帝国郵便になってからホルンが郵便マークになったのかも知れませんね。
by Akira (2007-12-19 20:11) 

klaviermusik-koba

よく見えませんがそういわれてもう一度虫眼鏡で見てもホルンには見えないような気もします。でも郵便馬車の時代からホルンはヨーロッパで広く使われていましたから、(すくなくとも現在のドイツ・オーストリア圏では)ある王国がホルンのマークを使わなかったとしてもイメージとしてはもう私の知る限り、1600年代にはすでにホルンは「狩り」と「郵便」のイメージが定着していたようです。楽器の中では一番遠くまできこえる音、という実用面から使われたものと思われます。akiraさんのブログをのぞいていて、ふと感じたことでした。
by klaviermusik-koba (2007-12-19 21:13) 

makkie60

20数年前、私の留学時には”POST BUS"の路線が結構ありました。鉄道の代替かも知れませんが、必ず土地土地の”POST"に停車していました。郵便馬車の名残りとの説も有りますが、集配もしていたのでしょうか?民営化され、日本の郵便会社のモデルとなった今では、古き好き時代のノスタルジーなんでしょうか・・・・・店子マッキー
by makkie60 (2007-12-20 15:45) 

klaviermusik-koba

そうですねえ。POSTBUSは1990年代にはまだ見かけましたが、民営化になってからはどうなったのでしょうか。私もよく知りません。
by klaviermusik-koba (2007-12-20 17:41) 

Akira

スイスやオーストリアにはPOSTBUSがまだありますが、ドイツにもあったのですか?
私は88年から97年迄ドイツに居ましたが、1度もPOSTBUSは見かけたことがないもので...。ドイツの路線バスはどちらかと言えばDB系列か、または自治体の交通局のものが多かったと思います。
by Akira (2007-12-20 21:01) 

klaviermusik-koba

多分akiraさんのいわれるのが正しいのでしょう。たまにヨーロッパに出掛けてもスイスもドイツも記憶がごっちゃになっていることが多いですからね。そもそもわたしはPOSTBUSは一度ものったことがない。でもこうやってブログでわたしの記憶の曖昧さが正されるのは、有り難いことと思います。
by klaviermusik-koba (2007-12-21 18:17) 

makkie60

友人に結構ホルン吹きがいます。楽器と弾き手(吹き手)との性格相関関係については、N響のオーボエMさん(アニメ+ドラマ、のだめカンタービレ顧問、相談役)の著作を始め、カナリの本が出ています。ホルン吹きって、何となく音質同様、丸ーい温和な性格の連中がよく見受けられます。私の遣る”ファミリー音楽会”にはホルン吹きは必要不可欠の存在!ガス管からナチュラルホルン、アルペンホルン、ピストン付き現代ホルンに至る、楽器の移り変わりを楽曲と共にたどるのは、伴奏や解説をしながら、楽しい一時になります。この”POST HORN"の説明には郵便馬車や先程の”POST BUS"の話を必ず入れていました。今や余り見られなくなったなんて、これからは”昔話”として喋るべきなんでしょうか?民営化もしたし・・・よく乗ったケルン郊外のLEVERKUSEN辺りの山間地域への”POST BUS"とその黄色い車体に描かれていた例の”POST HORN"はヤハリ青春の思い出になるんでしょうかネぇー・・・・・・?店子マッキー
by makkie60 (2007-12-22 12:08) 

klaviermusik-koba

いずれにせよ、郵便馬車がドイツに存在したことは確かだし、1800年代の終わりから1900年にかけて、未発達な鉄道を保管する役割はPOSTBUSがその役割を担っていたことは確かですから、問題は、POSTBUSがドイツからいつなくなったか?ということなのでしょう。わたしもむかしBaden-Badenから、チェーホフが滞在していたというBaden-Weilerというところまで、黄色いバスでいった記憶がありますが、それがPostbusだったかどうかは全く記憶にありません。でもブラームスやワーグナーが冒頭写真のようなPOSTBUSで旅行したかもしれない、と考えると親近感が湧きませんか。
by klaviermusik-koba (2007-12-22 12:57) 

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