大賀さんの想い出

　私の思い出す限りでもいろいろなことがあったが、その中でもとびきりの忘れがたい想い出を一つ。

　ずいぶん昔になるが、ヤマハの合歓の郷で何かの会合があったときのこと。最後のパーティ、宴もそろそろ終わりに近くなり，みんな三々五々散り始めたが、大賀さんとそのまわりに私を含め何人かがまだ残って話が続いていた。最後に大賀さんが「実は最近、私は飛行機の免許とったんだ。鳥羽の自衛隊の基地にソニーの小型機を止めてあるから誰か東京まで一緒に乗っていかない？」私はドジだからズラかりどきを逸したのである。みんな逃げ足が驚くほど速い。はっと気がついたときにはもうまわりには私以外誰もいなくなっていた。

　で、やむなく（？）私が同行する羽目になった。もとより，大賀さんは非常に察しのいい人だから私の心中をとっさに察したに違いない。「大丈夫、こばちゃん。今日は教官でもあるコー・パイロットが同行しているから操縦は彼にやらせる。心配するな」。そんなわけで車で自衛隊の駐機場まで来た。

　ソニーの小型機は操縦士を含め４人しか乗れない。大賀さんは副操縦席に座り，私は後部座席におさまって，出発である。滑走路に出てみて驚いた。滑走路の両脇には消防車がいくつか待機しているのである。これはもしかしたら大賀さんが操縦するときに備えてのことではなかったか、と少し冷えた。消防隊の列の間を小型機（名前は忘れた）は無事離陸し、東京に向かう。途中、名古屋上空や富士山の上空や横浜の上空を旋回して観光もかねさせてもらった。

　いよいよ羽田着陸態勢。大賀さんの解説によればこれは自家用小型機だがジェット機だし、性能は旅客機並みの完全自動操縦になっているから実に楽で安全なのだと聞かされた。かくて暮れなずむ羽田に無事着陸し、私の観光飛行は予想外に楽しく終わったのである。一方、大賀さんのまわりから早々とズラかった人たちは結果的にだいぶん損をしたことになる。

コメント 2

kobaさんこんにちは。

貴重な経験ですね。最近私は人との関わり合いの思い出は学ぶことが多いと思っています。
恥ずかしながら大賀相談役が音楽家だったとは知りませんでした。

ご冥福をお祈りさせて頂きます。

by abe (2011-04-26 19:56) 

その通りです。私も大賀さんからは学ぶところは多々ありました。非常に見識の広い人でした。残念なことです。
by klaviermusik-koba (2011-04-27 13:36)