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ドン・ジョヴァンニ [オペラ]

 まことに恥ずかしい話ではあるのだが,モーツアルトの傑作、オペラ「ドン・ジョヴァンニ」をこれまで見ていない。もとより、この中で歌われるアリアの数々は有名なものが多く、たいがいは自分でピアノで伴奏をしたことがあるか,聞いたことがあるか、いずれにしてもなじみの深い音楽が多い。私はオペラを見る前には可能な限り、対訳の台本を読むだけではなく,オケのフルスコアに一通り目を通しておく。そのため、私の楽譜棚は分厚いオペラのスコアが相当の部分を占めている。

 はじめて、このオペラを観るにあたってスコアを買い込んで楽譜を読んでみると、やはり知らないことは多いものである。モーツアルトの音楽は概してそう複雑ではないから、ピアノ譜を見ればオーケストレーションはおおよそ見当がつく,と思い込んでいるのは大間違いであることに気づかされた。例の一番有名な誰でも知っているト長調のメヌエット、第一幕の舞踏の場面で使われる音楽。じつは、三組の登場人物がそれぞれの思惑をかかえて踊る場面なのだが、ここでは、合計4組のオーケストラが使われる。オケピットにいる、本来のメインのオケは全休止。残りの三組のオケが舞台上か,舞台裏かで使われるのだが、(モーツアルトの指示では全部舞台上で auf der Buehne)第一オケが3/4拍子でメヌエット、第2オケが2/4でアルマンド、第3オケが3/8でフォリア、という、3つのまったく拍子の違った舞曲が同時進行で演奏される。当然スコアは非常に複雑な様相を見せている。小節線がオケごとにみな違う位置にあり、現代音楽さながら、といったところ。

 が、スコアを見ないで,音楽だけを聴いている人は(ほとんどの観客がそうであるわけだが),こんな複雑な仕掛けが隠されていることには気づかず、実に明快でわかりやすい音楽として聞き取ることができる。このメヌエットは一番単純でわかりやすい音楽としても知られる。モーツアルト,恐るべし、である。
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Takamoto

Finale の439小節から467小節の箇所ですね! 6名のソリストが2人づつ3組に分かれて、それぞれが違う拍子で歌っているのですね。次回「ドン・ジョヴァンニ」聴きに行く時、注意して指揮者に注目して見ます。
by Takamoto (2012-09-23 14:39) 

klaviermusik-koba

Takamoto様

406-467小節です。ただト書きでは最初は三番目の舞曲がフォリア、となっていますが、スコアではコントルダンス、と書かれています。どちらも三拍子系舞曲ですがここでは私にはどちらか判然としません。いずれも小編成のオケですから、スコア上では、各オケの入りに「ここで合図をいれる」と書かれていますが、これをやるのは当時はおそらくコンサートマスターだったでしょうが、今は指揮者が
オケピットからアインザッツを送るだけで、演奏には問題は起こらないと思われます。
by klaviermusik-koba (2012-09-24 09:31) 

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