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前田豊子先生と私(2) [洗足学園]

昔のことは日々疎くなるので以下は自分のための忘備録。

先に洗足学園からドイツから帰国後に仕事のお話をいただいた、と書いたが、この話は突然なんの前触れもなく舞い込んだのではない。そもそもの話は私のドイツ留学中にまでさかのぼる。友人からの紹介で、前田豊子さんという方がドイツを視察にこられて、ミュンヘンのスタインウェイ代理店でピアノを買いたい、ということだが、ついてはピアノの選定と、ついでに通訳も頼む、ということだったと思う。いつだったかは定かではないが、商談の通訳も引き受けたくらいだから、ドイツ語にそう難渋しなくなってからのことであろう。

スタインウェイ代理店で始めてお目にかかったのが、前田豊子先生と御主人の森為可先生ご夫妻である。「私たちの短大で使うので、なんでもピアノでは世界最高級品といわれる、スタインウエイとやらを買いたい、どんなピアノがいいのかわからないから選定を頼みたい」との話。とりあえず授業で使われるのならB型がいいのではないでしょうか、という私のすすめで店頭にあった何台かの中から選定を済ませた。そのあとの雑談で、洗足学園短大音楽科、ということを始めて耳にし、「帰国されたら私どもの学校にぜひ力をかしてくださいね」とのことだったが、私も外交辞令くらいに軽く受け取って「よろしくお願いします」くらいの挨拶を交わしただけであった。

それから何年かして、先ほどの話につながるわけだが、私はそのことはもうほとんど忘れていたのである。が、前田先生はずっと覚えていてくださったらしい。そんないきさつで私はとりあえず洗足学園に奉職することになった。スタインウェイはその後も本格的な4年制大学設立に向けて何台も増備されたが、このB型スタインウェイにはそういう思いいれがあって、特別に扱われていた。今でもそれはきちんとした状態で学園に保管されているはずである。当時のスタインウェイは現在のように大量生産はされなかった時代のもので品質は一番いいものであった。それ以降、前田先生と御主人の森先生とお食事や飲み会になり、アルコールがまわると必ずこのミュンヘンのスタインウェイの話になるのが慣わしとなった。

お二方とも故人となられて20年の年月がたった。今の洗足学園の繁栄ぶりを見るにつけ、感慨とともに人の絆の有難さに思い至る。
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