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音楽史、陰の仕掛人 [Literature]

めっぽう面白い本が出版された。小宮正安著「音楽史陰の仕掛人」(春秋社)

通常著名な音楽家の伝記、もしくは音楽史では、当該音楽家に関しては微に入り細にわたりスポットがあてられる。これは当然なことではあるのだが、たとえば、どのモーツァルトの伝記を読んでもかならず登場する重要な脇役がある。モーツァルトがザルツブルグで決別することになる大司教とか、スヴィーテン男爵、ベートーヴェンならば、パトロンのロプコヴィッツ公とか、ルードルフ大公、シントラーなどである。では彼らについて私がどの程度のことを知っているか、となると誠に心もとない。

この著者は逆に脇役に焦点を当て、彼らの性格、行状を中心に、モーツアルトやベートーヴェンと実際どのような関係にあり、どのような影響を作曲家に及ぼしたのか、という視点から書かれたもので、当時の社会状況も垣間みられ興味深い。当然のこととして、当時の社会とて、なにもベートーヴェンを中心に回っていたわけではない。何より、ひとつの項目が10ページ程度で、気の向いたところを気楽に読める、というのもいい。

私がとくに面白いと思ったのはベートーヴェンと、ルードルフ大公の関係で、この二人はパトロンと同時に、師弟関係でもあった。以前に私はルードルフ大公のピアノ作品を見て驚嘆したことがある。お殿様の道楽の域をはるかに超えた、高度なレベルの作品で、プロの作曲家、それも一級の作品として充分通用するものなので、私は、もしかしたらこれはルードルフの真作ではなく、ベートーヴェンではないにしてもだれかゴーストライターが書いたものではないか、と疑ったものだ。或はルードルフ自身が書いたものを、ベートーヴェンがアドヴァイスをして訂正したことだってあり得る。歴史とは面白いものだ。なお欲を言えばバッハ、ヘンデル、スカルラッティ、クープランなどのバロック音楽家の周辺の項目もあると誠に有り難いのだが。(札幌)
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HUH

とても面白そうだったので、早速注文し、今日手元に届きました。じっくり読んでみようと思います。ご紹介いただき有難うございました。
by HUH (2014-02-06 22:15) 

klaviermusik-koba

おはようございます。

特に専門家むけに書かれた本ではないのですが、私が読んでもなかなか面白く、タメにもなりました。多分このネタはどこかの講演を頼まれた時使えそう、という不純な動機もあるのですが。
by klaviermusik-koba (2014-02-07 09:31) 

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