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TEEの歴史 [Literature]

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どうやら原著者はフランス人で、モーリス・メルタン,ジャン・ピエール・マラスピーナ共著になるものを独訳した本らしい。知っているようで意外と知らないことが多かったTEE(Trans-Europ-Express)全集である。ヨーロッパの威信をかけた,すでに「古き良き時代」となってしまった,一等車だけの編成による、エリートのための国際列車として1957年から1995年(!)まで走り続けたTEE列車のすべての資料がその内容。

私がヨーロッパに初めて足を踏み入れた1960年、すでにこのプロジェクトは軌道に乗っていた。しかし一般には戦争の傷跡まだ癒えず、一般の列車は薄汚れたさえないもので、ヨーロッパの鉄道は日本から来た私に興味を持たせる魅力にはまことに乏しかった。今にしてみれば、もっとよく観察しておくべきだった、と後悔しているのだが、その中にあって、まだ数少ない列車ではあったものの、一度は乗ってみたい憧れの列車がTEEであったのだ。

国際列車に乗車して、国境を越えるのに国境駅で一時間もパスポートや荷物検査で待たされるのがごく当たり前であった時代に、走行中に車内で検査を済ませる列車は刮目すべきことだった。しかも日本にはそれまで一度も存在しなかった、「一等車だけの列車」とは、一体どんな人が乗るのであろうか、と貧乏学生にとっては雲の上の存在に見えた。最初は国ごとに違うシステムーーー軌間はまあいいとしても、信号、電気、など克服すべき問題が多くあった。とりあえずは、ディーゼル列車で国際間を結ぶのが一番手っ取り早い、ということで、当初のTEEはディーゼル列車でスタートした。(フランスは得意の電気機関車牽引に終始した)ディーゼル列車から一般客車の機関車牽引、電車へと変化を遂げつつある、まさにその時代に私はヨーロッパに足を踏み入れたのだ。

のちに「EU」となる、ついこの間まで戦争をしあっていた国同士が協力して夢の国際列車で人々を結ぶ。まさにEU思想のはじまりをここに見るのである。ページをくってみると、やはり知らないことだらけだがゆっくり楽しむこととしよう。

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Akira

こんばんは、kobaさん。

TEEの実車を見たことがない私は、写真だけの憧れの列車でした。この本は、私も刊行当初にNuernbergの書店で見つけて買い求め、今も時々資料として見返すことがあるほど有益な本です。サイズも比較的コンパクトですし、TEEファンとしては必携の一冊ですね。
by Akira (2015-12-26 21:47) 

klaviermusik-koba

おはようございます、akiraさん

このブログをご覧になるほどの方は、akiraさんはじめ、当然とっくにお読みになっている本、と思いましたがあえて載せて見ました。独訳されたのが2005年だそうですから、刊行されてから10年もたつのですね。新幹線がヨーロッパの高速鉄道実現に一役買ったのは間違いありませんが、こうして見ていると、TGVやICEが実現するには、やはりそれなりの高速運転に関する独自のノウハウの積み上げがあったのだとこの本を読んで感じました。
by klaviermusik-koba (2015-12-27 09:31) 

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