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札幌日記(辻井伸行君のことなど) [雑感]

たまたまTVで辻井君の快挙を知った。かねてから話には聞いていたが,ピアノはこれまで聞いたことがなかった。ニュースでほんの数秒間流れた「ハンマークラヴィア」のフーガをきいただけだが、瞬時で、あ、これは本物だ、と確信した。それと、日本もこういうすばらしい才能がでてきたとき、それを育てるだけの下地が厚くなってきているきたのだなあ、と考えると、感無量になった。この先才能を堅実にのばして将来大成することを切に祈る。

やや旧聞に属するが、「おくりびと」の映画でアメリカの外国映画の最優秀賞をとったことで話題になった原題「納棺夫日記」。わたしも以前に読んでいたらしく、記憶には残っていたが、改めて改訂版を読み直して大きな感銘を受けた。原作者の青木氏はこの映画に原作者であることを記すことを拒否したそうだが、わかる気がする。

私はこれまで、原作を読んで感銘を受け、あとで映画化されたのをみて、より感動を憶えた、という例はめったにない。むしろ幻滅を憶えることが多い。なんか、凝縮された美しさをもつショパンのマズルカのような小品を、大オーケストラ作品に編曲して聞かされるような水ぶくれ感を憶えるのだ。この作品の場合、多分、作者は第三章の「ひかり」を通して、仏教、とりわけ、親鸞の思想を伝えたかったに違いないとおもうが、これを映画化するのは至難の業であろう。一番ショッキングな部分だけが一人歩きしたことに対する作者の不満かもしれない。よって私はこの映画を見る気はない。しかし、原作は何度も読み返している。これほど簡潔、平易に親鸞の思想を伝えてくれた本をこれまで読んだことがない。人間の死に関わっている職業の人は多いが「死」そのものを直視する人はめったにいない。この本から教えられることは多い。

札幌大谷大学でも青木氏の講演の予定がある。ぜひ聞きたいものだが残念ながらその頃札幌にいない。

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