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ポエニ戦争 [国際問題]

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この映像は1987年に家族連れで訪れたシチリア南西部にあるアグリジェントのギリシャ遺跡である。こんなに完全な形で2000年以上も残っているのは珍しいが、この当時シチリアに旅行する日本人は滅多にいなかった。ローマとカルタゴが100年にわたって戦ったポエニ戦争に私が興味を持って、その舞台を訪れ、ついに滅亡したカルタゴ帝国の本拠、チュニジアまで足を伸ばすことになった。

日本人にとって一番有名な天下分け目の戦争史は関ヶ原の戦いであろうが、ヨーロッパ人にとっての天下分け目の一つがポエニ戦争なのである。もう2000年以上も昔の話だが、彼らにとってポエニ戦争はいまだに生きていて、彼らと話題を共有するにはこのネタは欠かせない。それもあって実際に元気のあるうちに現地に行っておいてよかった、と思っている。本で読むのと、現地を実際見るのとではやはりどこか違う。ドイツ人とこの話になると、血湧き肉躍る、という感じで彼らも夢中になる。お前日本人なのによくこんなこと知ってるなあ、と呆れられる。なにしろ2000年以上も昔の話だから、話題として政治的にも無難なので私はときどきこのネタを利用する。

無論、これについては無数の書物が書かれているし、歴史家でなくとも詳しい方も多いのだが、いまの日本が置かれた立ち位置、すなわち少し弱った同盟国アメリカ、ここぞと力任せにゴリ押しする新興国中国、相変わらず一筋縄で行かないロシア、北朝鮮、など複雑な国際問題。これからの日本はその中でどうなって行くのか。答えはわからないが2000年昔の話も生身の人間が行った凄惨な物語なので、何かと考える視点の一つとしていまも生きていると思う。多くの著者の中には日本はカルタゴと同じ運命をたどるのではないか、と危惧する人もいる。そうならないことを祈るばかりだが。。。

撃墜された旅客機 [国際問題]

おそらく意図して旅客機を狙って撃墜したわけではないことは確かであろう。たぶん、ミスったのである。ミサイルを打った人間は、しまった、と思っているに違いないが謝って済む問題ではないから、俺のせいではない、と強弁するだろうし、それを否定する決定的証拠を見つけるのも難しかろう。意図的に撃墜された旅客機は、私の知る限りでは大韓航空機が北朝鮮に撃墜されたことぐらいだが、これは善悪がはっきりしている。マレーシア航空の場合は、世界の世論は今のところロシアに分が悪いが、ロシアが自分が悪い、と認めたことはかつてないから、今回も結局うやむやで終わるのだろう。たまったものではないのは、犠牲者とその関係者ばかりでなく、マレーシア航空会社もそうである。この会社は先だってのオーストラリア沖の行方不明機も全く手がかりのないままで今だに経過している。

こういう場合、個人的に入っていた保険は別にして、航空会社が入っている犠牲者の生命保険や機体の保険などというものがあるのかどうか知らないけれど、補償されればまだしもましで、事件が曖昧だからそれすら難しい。不幸にして事故にあって亡くなってしまった本人にしてみれば、もうどうでもいいことであろうが、生き残っている人間同士のつばぜり合いが今後も続く。怒りをどこへ向けていいのやらわからない、という我々もせつない。こういう不条理は人間の歴史上、形を変えてたびたびあったわけだが、「戦争」という大きな犠牲を伴う不条理は心がけ次第で避けられる、と思うのだが、これも簡単ではない。イスラエルとパレスチナのような戦争は元をたどればヨーロッパ諸国の身勝手に行き着く、ということがわかっても、これも今さら誰もどうしようもない大きな不条理といえる。人間に生まれついた、ということはこういう不条理にも耐え忍ばなくてはならない。キリスト教の説く「原罪」という概念は非キリスト教徒である私には今ひとつ理解し難いが、こういう不条理をたびたび見せられるとキリスト教でいう「原罪」とニュアンスは違うが人間はやはり「原罪」を背負って生まれてくるのかもしれないと思いたくなる。

「クリミヤ」古くて新しい問題 [国際問題]

クリミヤ戦争、といえば世界史を習った人なら誰でも知っている。ロシアも含め、ヨーロッパ諸国が入り乱れて長らく争った歴史がある。ロシアはその時は力不足から、クリミア半島をものにできなかった。黒海に面した不凍港としてヨーロッパ諸国が喉から手が出るほど欲しかった地域である。

地勢的にはロシアが有利な場所にありながら勝利できなかったのは、鉄道の整備が遅れていたため、必要物資が充分に運搬できなかったから、と言われている。以来、ロシアは鉄道整備に全力をあげたが、これに大きく寄与したのが、意外なことにチャイコフスキーのパトロンであったフォン・メック夫人の夫であったカール・フォン・メックでモスクワーリャザン鉄道会社を立ち上げ、大成功を収め、その莫大な収益と鉄道の権益が未亡人となったナジエジダ夫人に遺された、ということが、小宮正安著「音楽史、影の仕掛け人」に記されている。

この戦争がなかったならばナジエジダ・フォン・メック夫人はチャイコフスキーのパトロンとはなり得ず、もしかしたらチャイコフスキーの数々の名曲は生まれなかったかもしれない。歴史とは異なものである。それ以来、クリミヤはいつも係争の土地であり続けたが、ソ連時代にロシア人を多く移住させ、セバストポリには巨大な軍事基地を作り、と既成事実を作ってしまった、ということであろう。そうであっても、ソ連崩壊以来もクリミヤはれっきとしたウクライナの領土であった。ソ連時代にウクライナの領土としてソ連が認めてきたのも、将来まさかソヴィエト連邦が崩壊するなどということはあり得ない、と思ったからにちがいない。国際法上も明白にウクライナの領土であるものをぶん取るのだから、たしかにけしからん話ではあるのだが、長い歴史を考えれば欧米がいくら非難してもロシアが簡単にあきらめるとは思えない。

防空識別圏 [国際問題]

歴史を長い目で見るならそう驚くことではない。史上世界最大の識別圏は(当時は防空、という概念はなかったから)大航海時代、スペインとポルトガルが地球を縦に線を引き、地球をこの半分づつ、俺とお前のものにしよう、と勝手に決めてしまったのが史上最大の「識別圏」であろう。むちゃくちゃな話ではあるが、いくらローマ帝国やビザンチン帝国が侵略を重ねて領土を広げたといっても発想のスケールが違う。

その視点からいまの事象を見るなら、経済力をつけてきた中国が、このチャンスに自分のテリトリーをできる限り拡大させよう、と考えるのは歴史的に見てもある意味自然なのだが、いかにも時代錯誤である。日本が当然反発するのは折り込み済みで、中国政府はそんなもの屁とも思っていない。問題はアメリカで、アメリカがこの海域を守るのがどの程度本気か、というのを見るために風呂敷を広げてみた、というあたりかもしれない。

だがこのところの世界の反応を見ると、中国のこのやり方に賛成する国はひとつもない。アメリカは日本を守るため、というより、自分の国益のためただちに行動に出たのが理由の80%で、残りの20%が日本のため、ということをはっきり示してしまった。中国にとってもここまではっきりさせるのはまずかったのである。イギリスのファイナンシャルタイムズはすでに、信じられない愚挙、と社説を載せている。習近平の権力基盤は盤石とはいえないし、軍部が暴走をする危険性はたぶんにある。当分日米・中のにらみ合いが続くであろう。さりとて一旦広げた風呂敷を中国が引っ込めることはないとみなければならない。日本のとるべき道は、ならぬ堪忍、するが堪忍、ここはことをかまえず、可能な限り世界の世論を味方に付けるよう行動するのが最大の防御になる、と私は考える。

ひとつ気になるのは民間航空で、「識別圏」を通過したからすぐに撃ち落とす、という無茶はいくら中国でもそれはないと思うが、乗客の安全を第一に考える航空会社として、万一のことがあってはならないからどうするのだろうか。台湾行きにも、香港行きにもだいぶん回り道をせざるを得ない。
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