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Polonaise-Fantasie [洗足学園のピアノ講座]

 前回はリストのソナタについて考える講座を持ちました。今年度はショパンイヤーということで、洗足学園の恒例の講座は2回ともショパン、それもふだんなるべく講座などで取り上げられることの少ないものをと考えました。一般的なものはどこでも聴けるから、講師は誰もがさけがちなものを、ことさらに選んでやっているように見えるけれどそういうわけでもないのです。ここでしか聴けないものを、ということで、希少価値、とお考えいただければ、と願っています。

 9月14日(火)18:00 洗足学園 場所は未定

 1回目はポロネーズ・ファンタジーOp.61を取り上げる。この素晴らしい名曲はショパンの作品の中でも屈指の傑作と考えられている。そして最近はコンサートで演奏される機会も非常に多い。が、実際は先回のリストのソナタと同じように、全体の輪郭が非常にとらえにくい。いわば、即興演奏を、そのまま楽譜に書き取ったような自由闊達さがまず目につく。そしてショパンの音楽の一番の本質であるファンタジー、もしくは即興的な自由さが演奏家、そして聴衆にこの曲の本質を見えにくくしている。しかし、一般にそう思われているように、ショパンは勝手気ままに、興のおもむくまま、成りゆき放題に曲を書き進めていったのではない。
 
 この曲をソナタ形式とか、3部形式、とか既存の形式パターンに当てはめるのはもともと無理があるが、明らかに全体は周到に考え尽くされた構造のもとに作曲されている。即興的な恣意的に見えるパッセージや、複雑な転調が構造を表面的に見えにくくしているだけなのだ。このわかりにくい曲の、とくにわかりずらい箇所をすこしづつ解き明かしてゆくのはわくわくするくらい興味深いことと思っている。

 2回目は、今のところ詳細は未定ですが、コンチェルトを含めたオーケストラ付き作品をとりあげることを予定しています。これは来年2月頃の予定です。

「厳格な変奏曲」 [洗足学園のピアノ講座]

毎年2回続けてきた洗足学園音楽大学のピアノ講座、私ももうすでに定年になっているので、この先いつまで続けられるかわかりませんが、毎回、全力投球でやってきて、このおかげで私自身もずいぶん成長できました。

最近はベートーヴェンのハンマークラヴィアソナタのフーガの分析など、ときにはずいぶん難しいものも題材として取り上げ、ふだん滅多に聞けない講座にしよう、とあまり人気にこだわらずこの年の人間としてぜひ後輩に伝えておきたいことをお話ししてきました。それは普通のピアニストのとらえ方とも、理論家のとらえ方ともまた違った音楽の探り方を心がけています。

今回はメンデルスゾーンの「厳格な変奏曲」を取り上げます。メンデルスゾーンはお金持ちの息子で恵まれた環境にあったせいか、音楽に深みがかける、という評価が強いようですが、私は若い頃からメンデルスゾーン大好き人間として、その直截な音楽に魅せられています。

メンデルスゾーンを読み解くカギは「歌謡性」「フーガ」「コラール」この3つにあると思います。もう一つ、ユダヤ教からキリスト教に改宗した複雑な背景を持つ家系の一人としての音楽家として、その音楽に宗教的な深い陰を投げかけていることも見逃せません。

以上のような背景を知ってこそ、メンデルスゾーンの素顔と音楽の本質に迫れるのではないかと思います。タイトルの「厳格な変奏曲」の「厳格」は単なる曲のムードをあらわしたものではなく、メンデルスゾーンのもっとも深い宗教的心情から発せられたメッセージと私は考えます。

    6月21日(木)18:10 洗足学園大學Bリハーサル室
    誰でも入場できます、入場無料、たたし楽譜はご持参ください。


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