SSブログ

フーガの技法(2) [ピアノ音楽]

この曲集はどうやら版によって順番がまちまちで、自分で考えて演奏順を決める、という方法もありそうだ。それにしてもざっとおしまいまで目を通してみて、いくつかの感想を持った。

まずこの「フーガの技法(Die Kunst der Fuge)」という題名はバッハが与えたものではないかもしれない、という説もあるが、「技法」という訳は間違いではないが、私は多少違和感を持つ。このたった4小節の単純な主題からこれほどの多彩な世界を持つ驚異的な音楽の構成法だからだ。全曲の中で、どれ一つとして似た構成、似た感じの曲がない。Kunst、という言葉には技術、技法という意味のほかに芸術、人工物、といった意味があるが、この曲の内容をより正確に表わすには「フーガの芸術」と訳した方がよりいいのではないか、という気がする。

もうひとつ。バッハはContrapunctusというタイトルをそれぞれの曲に与えられているが、いくつかの複雑きわまりないフーガ、例えば、6番の「フランス風序曲」のリズムを基本としながら、テーマの変奏とその反行形、テーマの縮小形とその反行形、という4つのVarianteを秩序立てて組み合わせて、それらが和声的に全く自然な進行を保っている。この曲は厳密にはフーガとはいえそうにないから、厳密にフーガと呼べるものも含めて、全部にContrapunctusという統一した名称をバッハは与えたのかもしれない。

テーマ以外にも、この時代の和声進行、転調(だいたい関係調の範囲にとどまる)、いくつかのリズムの組み合わせ、など実に制約が多い中でこれほどの多彩な世界を持ち、音楽としてバッハ晩年の独自の深い世界がかいま見られる、というのは驚嘆するばかりである。

いちばん奇跡的な音楽、最後の未完のフーガについてはいいたいことは山ほどあるがこれはまたいずれ稿を改める。


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。