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ピアノという楽器の面白さ [ピアノ音楽]

 ピアノを弾くひとはたいてい、この楽器がほぼ現在の形に完成されたのは19紀後半になってからだということを忘れている。そのため、現代ピアノで演奏することを前提にした曲は比較的弾きやすく、現代のピアノから過去に向かって遠ざかる作品ほど弾きにくくなるのはなぜかがよく分からないようだ。

 古典の曲は本当の意味で演奏が難しい、とはよく言われることだが、これには楽器の性能の違いがおおいに関係している。もちろん、すぐれたピアニストたちはこれら楽器の違い、その他の条件を考えて演奏しているから、バッハやベートーヴェンを弾いても聞き手には楽器の違いによる違和感を与えることはない。

 バッハなどの古い時代の音楽を現代ピアノで弾くのは、別楽器のために書かれたものを「ピアノ」という違った楽器に「翻訳」する作業が必要となる。ちょうどある言葉を別の言葉に翻訳するのに、内容が分からないままただ単語を並べ替えて「直訳」してもしばしば意味不明になることと似ている。誤解をしないでいただきたいのだが、私はピアノでチェンバロのまねをしろなどといっているのではない。「まね」をするくらいならほんもののチェンバロで弾いたほうがはるかにマシである。実際バッハのたいていの曲は当時の楽器で演奏すると、問題の生じることがずっと少ないことは私はチェンバロやオルガンで何度も経験している。

 この「翻訳」をする、ということを若い人に分かってもらうのはなかなか難しい。バッハならまだしも、これがブックステフーデやフローベルガーやスウェーリンクなどになるともうみんなお手上げになる。そのためこれらの優れた作品がピアノで弾かれることはほとんどない。ピアノでも充分弾けるはずなのだが残念なことだ。


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