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マズルカ論 [ピアノ音楽]

 明後日,札幌のショパン協会で講演をする題材が「マズルカ」であるが,まあこの種のテーマはポーランドのピアノの先生達にまかせておけばいいようなものの,私なりのマズルカ観を披露してみたい。マズルカは「ポーランド」というイメージがあまりに強いからほかの国の人が理解するのは難しい、という偏見を持つのは世界でも日本人だけだと私は考えている。ショパンコンクールでも、イタリー人はイタリー人なりの、ロシア人はロシア人なりの、中国人は中国人なりのマズルカを弾く。それでいいのだ。習うより慣れろ。

 もとより、ポーランド人からマズルカを教わるのが悪い、というわけではないし、それは多いに教わるべきなのだが、どんなにまねをしようとしたところで私たちはしょせん日本人なのだ。しかしマズルカが世界中の人に愛されているということは、民族的な要素を超えて、ショパンは基本的に「西洋音楽語」で語っているからこそ、一民族の枠を超えて、世界中に愛される芸術となったことは忘れるべきではなかろう。だから、リストの「ハンガリア狂詩曲」が誰にでも分かるなら、ショパンのマズルカも分かるはずなのだ。

 ブログで詳細を述べることは出来ないが、ここでポーランドの先生たちが講義ではほとんどふれない、しかし一番重要なことだけをおおよそあげておきたい。

(1)2拍目、もしくは3拍目に来るマズルカ独特のアクセントは、ショパンの場合、実は和声と密接な結びつきがあること、これがワルツとの大きな違いの一つ。和声のある程度の知識をもった上で、ショパンの書き入れたアクセント記号(ほとんどの人が見逃している)をよく読めば、7,8割方の理解は可能、だと思う。

(2)これはあまりに当たり前すぎることなのでポーランドの先生は言わないのだろうが、重要なのはマズレックの付点音符の1拍目の重み。マイアベーアだったかがショパンがマズルカを弾くのを聞いて、これは2拍子だ、といってショパンと大論争になった、という逸話は示唆に富んでいる。弾きようによっては2拍子に聞こえることもある、というのもあながち嘘ではない。でもこれをポーランドの先生にいうとイヤがるのだが。

(3)晩年のマズルカは民族的な要素が希薄になり、より「対位法的な」要素が加わる。それも、あまり表面にはあらわれない「かくれ対位法」なのである。これはほとんど見逃されている。日本人はマズルカより、対位法にはるかに弱い。

まあこんなことをおおよそ話をしてみようと思っている。高校生くらいには少し難しい講義になるかも知れない。

 


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コメント 12

K.

あぁ、聴きに伺いたかったです。残念。

なんか、この時期(きっと毎年なのでしょうが)
本当にやることいっぱいで、
あわわわわなのです。

ご無沙汰してしまい、申し訳ございません。
元気にしております。
また落ち着いたらメールかきますね。
ブログも楽しみにしています!
by K. (2008-02-01 23:20) 

klaviermusik-koba

この寒い札幌では無理ですし昨晩無事終わりました。
あなたにとってはDu hast gar nichts regeumtですよ。
今日から試験のための下準備が始まります。3月16日の関空ゆきの声を予約しました。皆に会えるのを楽しみにしています。
by klaviermusik-koba (2008-02-02 09:40) 

klaviermusik-koba

綴りが間違ってたからわからなかったかもしれません。
geseumtだったかな。Nichitsは大文字ですよね。だんだんドイツ語忘れてきた。夕べの寝不足のせいもある。う〜ん年だなあ。
by klaviermusik-koba (2008-02-02 11:21) 

れいこ

私にはとっても必要そうな講座ですね、聞きに行きたかったです。

札幌はさぞかし寒いでしょうね、今日はこちらでも寒いです。
明日はモーツァルトK448本番です、この曲はモーツァルトが女性のお弟子さんと演奏する為に作った曲だそうですね パッと頭に思い浮かんだのは10月の演奏会のklaviermusikさんとKさんの演奏です、素敵でしたぁ〜〜!!
私たちも及ばずながら頑張ります。
by れいこ (2008-02-02 16:03) 

klaviermusik-koba

ありがとう。今日ですね。ご成功祈ります。どうだったか結果を知らせて下さい。そうそう、楽譜もそれぞれ5部づつくらい欲しいですね。暇なときでいいからお願いします。もちろん必要経費はお払いします。講座の後スポンサーのK楽器の店長さんと話をしていて、こんど名古屋へ転勤なのだそうです。で、大分あなたの話で盛り上がりましたよ。
by klaviermusik-koba (2008-02-03 09:52) 

れいこ

コンサートは無事に?終える事ができました、応援メッセージありがとうございました。

今回のコンサートは市が地元演奏家を育成する目的で全面的に費用負担をしてくれる代わりにお客さんにはアンケート用紙が配られ、「育成される」私たちにはお客さんの生の批評が届きます。

一番多かった声は「2台ピアノを初めて聴きました」「息がぴったり合っていました、どうやって合わせるのですか?」「K448良い曲ですね、大好きになりました」「あの忍者のような素早い譜めくりはなんとかならないものか?気になる」でした。

決して褒めてくれない師匠からは「縦のバランスがまだまだ良くない、転調したときの音色の変化が乏しい」とアドバイスをいただき、母からは「2楽章が良かった、この曲良い曲ね」と言われました。

反省点はせっかくフィナーレを使えるのだから、もっと楽譜に手を加えてページ数を減らしたり、都合の良い楽譜作りに力を入れるべきだったかな?と思っています。
部分的にどうにも譜めくりできないところは書いたんですけどね。
技術的な部分には限界があるけれど、楽譜の細工は事前にできた事です(反省)

反省点もありますが、聴いて下さった方々に私たちなりのモーツァルトの魅力を伝えられたのでは?と思っています。

楽譜の件はまたメールでお知らせします。
by れいこ (2008-02-04 13:20) 

klaviermusik-koba

おめでとう。決してほめてくれない師匠でもちゃんと聞いてくれての批評だから、いいのじゃないの。踏めくりは、きちんと付けるか、あるいは楽にめくれるところまであらかじめ暗譜をしておく、という方法もあります。
by klaviermusik-koba (2008-02-04 16:38) 

K.

ごめんなさい。お返事遅れました。
Dudenの”Redwendungen"の辞書を手元に持っていないので、
確実なことは言い切れないのですが。

Nichts・・・は小文字でもいいような?
gesaeumt(ウムラウトでは?),aのウムラウト=aeですから。

どうかなぁ?
またちょっときちんと調べます。すみません。
by K. (2008-02-05 22:04) 

klaviermusik-koba

やっと思い出した。aウムラウトが正しいようですね。そもそも私のドイツ語は、耳から入って、綴りもわかってるつもりのが多いくせに、実際会でみるとあやふやになる。ちなみにSchifffahrtの「fは3つですかね、2つでいいのですまね。
by klaviermusik-koba (2008-02-06 08:51) 

K.

たしか3つのはずです。

でも10年ほど前に”ドイツ語の書き方”が
新しく改訂されてから、
いくつかの単語によっては、
2つでも良いようなこともあり、
正直”ちょうど変換の時期に”ドイツ語を学んだ私は、
訳わからない時があります。

ちなみに先日ドイツ語専門の電子辞書買いました。
重宝しています。
by K. (2008-02-06 22:14) 

klaviermusik-koba

なるほど,あなたほどドイツ語ができても向上心旺盛ですね。すごい。ところでドイツ語の電子辞書というのは,独独辞典ですか,独和ですか。電池が切れそうになると,fffがffになったりする?
by klaviermusik-koba (2008-02-08 18:04) 

K.

・・・fffがffになったら、むしろ賢いですよね(笑)。
大ウケしてしまいました、先生のコメントに。

私が購入した電子時辞書には独和大辞典、クラウン独和辞典(音声対応)新コンサイス和独辞典、ジーニアス英和大辞典、Oxford Duden German Dictionaryなどが入っています。特にドイツに強いタイプで。他には仏語、英語、韓国語など、それぞれにスペシャライズされたバージョンもあります。

Ex-Wordという電子辞書です。今は4万以内で購入できます(最初の定価は6万以上でしたけど)。

新幹線の中でシューマン関係のドイツ語の本を読む時とか、やっぱりいりますもん・・・
by K. (2008-02-08 22:43) 

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