菩提樹(わが心の歌) [ピアノ音楽]
この年まで音楽を職業として続けてきて、実に多くの音楽に接してきたが、その中でも特別の音楽を、といわれると私はまず筆頭にこの「菩提樹」をあげる。「冬の旅」はシューベルト最後の年に作曲された歌曲集でその第5曲目にあたる。
ポピュラリティからいってもトップクラスの曲だから今さら解説の必要などないかも知れない。理屈抜きに素晴らしい音楽は「冬の旅」には多く、「からす」「旅籠屋」「幻の太陽」「辻音楽師」など高校時代から、自分の部屋でこれらの曲に接しながら、何度も涙にくれた。「菩提樹」はそれらの中にあって、明るい色調を帯びているが、この曲もすこし理解が深まると決して明るい音楽ではないことがわかる。2番の歌詞は、暗闇の中を、愛の言葉を書き付けた菩提樹の前を通る。見えないはずなのに思わず目をつぶる。菩提樹の枝がささやいたかに聞こえた。「友よ、こここそおまえの安らぎの場所なのだ」。曲の最後の部分。若者はその場所からはずっと遠くまできているはずなのにまだあのささやきが聞こえる。「あそこなら、おまえの安らぎを見いだせるのに」(Du fändest Ruhe dort!)この木々のざわめきを思わせる単純なピアノパートの美しさと来たら! この「安らぎの場所」とは愛と死がないまぜになった、シューベルト自身の死の予感でもある。
これまでのところ、私は「冬の旅」をコンサートで全曲通して弾いた回数はそう多くない、せいぜい5,6回程度に過ぎない。それでもこれはピアニスト冥利に尽きる曲であろう。「冥利に尽きる」ことは一生そう何度も経験しないほうがいい。
ポピュラリティからいってもトップクラスの曲だから今さら解説の必要などないかも知れない。理屈抜きに素晴らしい音楽は「冬の旅」には多く、「からす」「旅籠屋」「幻の太陽」「辻音楽師」など高校時代から、自分の部屋でこれらの曲に接しながら、何度も涙にくれた。「菩提樹」はそれらの中にあって、明るい色調を帯びているが、この曲もすこし理解が深まると決して明るい音楽ではないことがわかる。2番の歌詞は、暗闇の中を、愛の言葉を書き付けた菩提樹の前を通る。見えないはずなのに思わず目をつぶる。菩提樹の枝がささやいたかに聞こえた。「友よ、こここそおまえの安らぎの場所なのだ」。曲の最後の部分。若者はその場所からはずっと遠くまできているはずなのにまだあのささやきが聞こえる。「あそこなら、おまえの安らぎを見いだせるのに」(Du fändest Ruhe dort!)この木々のざわめきを思わせる単純なピアノパートの美しさと来たら! この「安らぎの場所」とは愛と死がないまぜになった、シューベルト自身の死の予感でもある。
これまでのところ、私は「冬の旅」をコンサートで全曲通して弾いた回数はそう多くない、せいぜい5,6回程度に過ぎない。それでもこれはピアニスト冥利に尽きる曲であろう。「冥利に尽きる」ことは一生そう何度も経験しないほうがいい。
2008-11-10 13:11
nice!(0)
コメント(3)
トラックバック(0)
昨年から今年にかけて幸運にも三大歌曲集の演奏の機会が有りました。私の場合にはどの曲集でもかなり後ろの方に一番好きな曲(小川の子守歌、幻の太陽、海辺にて)が置かれているので良く集中出来ました。つい先日詩人の恋を演奏したばかりですがちょっと機会に恵まれすぎでしょうか?ですが詩人の恋は三月には東京で演奏予定ですので聴いて頂けると嬉しいです。
by NO NAME (2008-11-11 06:08)
名前を書き忘れました・・・
by イトバク (2008-11-11 06:09)
ほかの曲集にも、もちろんいい曲はたくさんあります。詩人の恋もいいですねえ。歌曲の世界もはまり出すとこれまたきりがない。高木さんが今度リサイタルをします。先日少し聴かせてくれましたが、いい会になりそうです。(残念ながら私は札幌のため行けませんが)
by klaviermusik-koba (2008-11-11 13:58)