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若杉弘さんの逝去 [音楽全般]

 今朝の新聞の報道で知った。去年秋何かの会議で同席したとき、そう悪いとも見えなかったが、その時はすでに病魔が彼を襲っていたのかも知れない。

 オペラや初演作品の演奏で歴史的な大きな業績を上げた人である。芸大の名誉教授称号授与式でご一緒だったから、全く同じ年だったといっていい。先になくなった岩城宏之さんは、何年か先輩で、何十回も仕事でしごかれながら成長をした頃がなつかしい。演奏界の世界は厳しい。それでも、あのころはいくら叱り、叱られてもそれで仕事が来なくなる、ということはなかった。いいところはお互い認め合っていたのかも知れない。今はもっと厳しい。誰も怒りはしないが、ダメなら次から仕事は頼まれない。

 若杉さんとは何十回コンチェルトを演奏したか記憶にないほどだが、それでも駆け出し時代の指揮者にたいする風当たりは厳しい。こんなこともあった。チャイコフスキーのピアノコンチェルトの最初のリハーサルである。どうやら、チャイコフスキーのコンチェルトは彼は初めてだったらしいが、練習が始まってまもなく、読売交響楽団のコンサートマスターからいきなり罵声が飛んだ。「おまえ、そんなんでチャイコフスキー振れるのかよ!」びっくりした。最初、わたしが怒鳴られたと思ったのだ。彼がどういう対応をしたかおぼえていないが、私にはショックだった。コンサート自体に特に問題が起こったわけではなかった。傍目にはかっこよく見える指揮者としてのきびしい一面を目の当たりにして、指揮者というのは大変な仕事なんだなあ、と思った。こんなことでいちいちめげていたら指揮者なんかなれない。私にはとうてい無理だ。指揮者はオーケストラがあってはじめて成り立つ職業なのだから。あれだけの仕事を残した陰には、もっといろいろなこともたくさんあったに違いない。合掌。

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コメント 4

ソラリス

まずはご冥福をお祈りいたします。惜しい方を亡くしましたね。若杉弘さんと言えば「世界的指揮者」と、お聞きしていますが、そういう方でも大変な時期もあったのですね。指揮者って「皆を従わせる偉い人」イメージがありますが、苦労も多いのですね。それも乗り越えて強い方でしたね。 お悔やみ申し上げます。
それにしてもコンチェルトの指揮って大変そうですね。コンサートマスターにも監視されそうで恐いですし、ピアニストの機嫌も損ねたら…どうしましょう?!
♪でも私はピアノ・コンチェルトは大好きなんです。チャイコフスキーのもいいですね。
by ソラリス (2009-07-22 14:36) 

klaviermusik-koba

世の中楽な仕事なんてないと思います。でも経験からいえば、コンチェルトだから特に大変、ということはないと思います。合わせる、というのはある種のカンの問題ですから、よほどセンスが悪くない限りなれられると思います。
by klaviermusik-koba (2009-07-22 20:58) 

ake_i

今日、
帰宅して、このニュースを知りました。
先生がコンチェルトのレッスンをしてくださり
「楽しんでいらっしゃい。。。」
と仰られたとき、
何か、感じたので・・・・

でも、何か、先生がお元気、なかったように思ったのです。
・・・・知りませんでした。


先生と、今日、モーツアルトを弾けて、私はとても嬉しかった。
アリガトウゴザイマシタ。、
by ake_i (2009-07-22 22:53) 

klaviermusik-koba

自分では人に会うときつとめてその時の気分は相手に見せないように気を遣っていましたが、やはり気づきましたか。私はもともと躁鬱のヶはあるので、きのうは多少うつ状態だったかも知れません、

年齢柄、同年輩のの友人の訃報を聞くことが多いこの頃ですが、やはりこのさびしさは「相手が成功しているか」「落ちぶれているか」に関係なく寂寥感をおぼえます。それがもしかしたらあなたに伝わってしまったのかも知れません。これはまずい。あなたは鋭い人ですね。ブラームスの晩年の寂寥感がとくに身にしみます。あれだけの大天才で成功した人でも(天才であればあるほど)年を取ってからの寂寥感というもは万人に訪れるもののようです、でもそれ音楽に昇華させたのが大作家の特別なところです。

ともあれ、ウイーンは楽しむところです。お体お大事に、末筆ながらご主人に」よろしく。
by klaviermusik-koba (2009-07-23 10:08) 

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