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偽物・本物 [音楽全般]

ベートーヴェンの再来、とはまあ言ったものだなあ、となかば呆れていた。マスコミがこういう仰々しいうたい文句で担ぎ上げる時は、特にクラシック音楽に関しては私はいつも疑いの目を向ける。今回もそうで、本当に天才的な才能なら、天才の重要な特徴として非常に若い段階から信じられないほどの才能を見せるものだ。そしてそういう途方もない才能がある、という噂はマスコミの格好の対象になる前に、なんらかの形で音楽業界には知れ渡るものである。この業界の人が知らないうちにマスコミに持ち上げられるケースは大体いかがわしいことが多い。

これまでそんな話は誰からも聞いたことがなかったから、TVの特集を見て一体なんのこっちゃ、と成り行きを斜めに構えて見ていたので、やっぱりなあ、とは思ったけれどゴーストライターがいた、とまでは想像しなかった。クラシック音楽に関する限り、日本人特有の真面目さが支配的だから。

偽作問題はどこの国でもどのジャンルでも昔から存在した。今回はマスコミがフェイクを見破れなかった、と問題になっているけれど仕方がない面もある。250年以上たった現在だってバッハの真作かどうか、と問題になっている曲が700曲以上もあるのだ。どれも世界中のバッハ学者が必死に研究をつづけてさえこの有様である。それでも昔は初版楽譜、自筆原稿の筆跡や紙、インク、などの「証拠物件」がある程度残っているが、現代の作曲はほとんどがPCであるから自筆原稿などの証拠物件は残らないことが多い。真贋の証明は一般の人が思うほど簡単なことではないのである。

セバスティアン・バッハの長男、ウィルヘルム・フリーデマンも天才的な才能の持ち主で、彼の残した真作は第一級のものである。それでも性格的な問題が災いして晩年は身を持ち崩し、父親の作品を自作と偽って出版しようとしたがバレて問題になった。それを伝え聞いたセバスティアンは心底嘆いてこう漏らしたという。「ああ、フリーデ、何もわざわざワシのものを持ち出さなくとも、お前には自分で立派なものを作れる才能があるのになあ。。。」
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