南相木村のダム

　この南相木村にロックフィルダムを作る。という話が持ち上がったのは１９８９年に我が家が完成してまもなくのこと。引っ越しそうそう私はいやな夢を見た。我が家の周りはすべて森に囲まれているはずなのに、不動産屋がやってきてこの土地を買収したい、という。ここに一大レジャーランドつくる予定だからここの土地もいるのだ、という。私は「いやだ」といったら、「いやなら売らなくてもいいが、あなたの家は巨大なレジャーランドの真ん中に囲まれることになる。それでもいいのですか」

　こんないやな夢はそうそう忘れられるものではない。それからまもなくである、この上流にダムをつくる、よろしくご協力のほどを、と東電の連中が何人かで名刺と菓子折をもって挨拶に来たのは。あれは正真正銘、正夢だったのだ！　それから１５年の年月がたち、その間、いろんないきさつがあったが、結局ダムは完成した。見たくもなかったが、友人が何人か訪れた際、一度見に行ってみようか、ということになり、昨年秋の紅葉美しい季節に完成したダムをはじめて見た。感心したのはあらためて日本の世界に冠たる土木技術と、これほどの巨額な金が不況といわれる日本に存在するのだ、ということと、さらにこれも不況対策の国策の一つではないのか、ということだ。ダムの堰堤の一番目立つところに日本の有名ゼネコンの名前がいくつも麗々しく掲げられている。当時、この手のプロジェクトが日本中にいくつかあったが、国会で税金の無駄遣い、とたたかれ、大半は中止になったが南相木ダムだけは続行された。

　最近、エジプトのピラミッドは王の権威を誇示するためのものと云うより、当時の不況対策だった、という説が云われていることを思い出した。１０００年くらいたってこのダムがものの役に立たなくなったら、人々はこれを見てなんと云うだろう。

コメント 3

土木技術屋の独り言です。
自然環境を守るため、ダムは無駄という風潮ができあがり、いくつかの計画は無くなりました。確かに利水関係や治水では、水需要も減ったり新しい工法が確立して水害が少なくなったりしてはいます。しかしダム建設への反対の一部は都会の人達の都合が多く反映されているのではないかと思う時もあります。
都会の人々の為に電力を作り、山に降った水を貯めて送っているのは都会から離れた山々ですし、日本は水に恵まれているため、一般に水と空気は只と思われがちですが、水を蓄えているのも空気を綺麗にするのも田舎の山々があるからだとボクは思っています。
官主導のダムの多くはその計画の甘さのため、見直し・廃止となりました。しかし、今後のエネルギーの枯渇や渇水対策を考えると必要なものは作らなくてはならないのかなと思います。
電力に変わるエネルギーが発明されたら、ダムの多くは無用の長物になるのでしょうね。

おまけですが、このダムのおかげで南相木村には多額の固定資産税が入るようになり、財政再建団体から脱したということです。
by サワダ (2006-07-05 13:51) 

なるほど、いろいろなものの見方があるのですね。スイスでも一度巨大なダムを見せられたことがあります。このダムもしもの事があったらこの下流にある君の別荘どうなる？ときいたら、「そうなればすべて終わりさ」。スイスよりは日本の土木技術のほうを私は信用しますが。
南相木村が税金のおかげで潤ったのはご同慶の至りですが、でもあのダムのある場所は国有林ではなかったかな？村有林なら分かるが、国有林に作った施設でどうして村に税金が入るのでしょうね。
by klaviermusik-koba (2006-07-05 16:17) 

固定資産税は土地と建物にかかってきますが、このダムの場合ダム湖や土地については国有林かもしれませんが、ダム本体と発電施設は企業（東京電力）の所有物ですから、課税の対象になっているのだと思います。
by サワダ (2006-07-06 16:02)