山田耕筰のピアノ曲 [ピアノ音楽]
私の手元にある山田耕筰ピアノ曲全集は200ページをゆうに超える、布張りの立派な製本で春秋社から1991年に出版されたもの。数曲ずつがまとめられて組曲になったものと、あとは小品がほとんどである。信時潔のピアノ曲にはまりこんでいるうち、全く同年代に生きた山田耕筰のピアノ曲を知らないのは片手落ちではないかと思い、パラパラと日がな1日弾いてみた。山田のピアノ作品の傾向を一口で言うのは難しい。すくなくとも彼の代表的作品である有名な歌曲から来るイメージとはほど遠いことはたしかである。1910年代から30年代に書かれたものが多いが、これを当時の西洋の作曲家の作風と比べるのは面白い仕事だが、ここでそれをやる余裕はない。
ただ、分かるのは当時のヨーロッパのあらゆるスタイルの(調性のあるものも、ないものも、旋法的なのも、日本民謡風なのも)ごたまぜの感が強い。ここで山田は自分の進むべき道をずっと模索し続けたのだろうと思われる。スクリャービンの影響を強く受けたらしいことは知られているが、作品から見る限り、徹底的に研究した痕跡はなく、ごく表面的なものにとどまっている。ただ、歌曲のように、外国の第1級の作品と比較するに値するものは残念ながらみあたらない。ピアノ曲に関する限り、私はまよわず信時作品に軍配をあげる。ただある作曲家を評価するのに、その作曲家の最高の傑作で考えるべきだ、と私はつねづね思っているから、ピアノ曲に思わしいものがないからといって山田の作曲家としての評価を低く見るのはフェアではない。
2007-10-19 21:32
nice!(0)
コメント(2)
トラックバック(0)
「からたちの花」独奏用編曲は自身によるものにも関らず歌曲との印象の違いに驚きました。
最近何故か宅孝二の「3つのピアノ曲」をさらっていますが、こちらはいかがですか?
by イトバク (2007-10-23 06:55)
この曲は昔少し、あたってみた程度で、あまり印象に残っていませんが、宅孝二の時代になると作風も洗練されてきます。私はこの曲には比較的いい印象を持っていますが。今見たらどう感じるかは分かりません。宅先生はピアニストですから、弾きにくい割には効果がない、ということはありません。
by klaviermusik-koba (2007-10-23 07:40)