ピアノが本物になる時期 [ピアノ音楽]
正月そうそういいニュースが舞い込んだ。芸大時代の私のクラスの生徒だった、松川儒君というピアニストが、ヴォルフ歌曲全曲演奏で、文化庁芸術祭・大賞を受賞した、とのこと。ヴォルフの歌曲伴奏というどちらかといえば地味な分野でのこの快挙はすばらしい。
私は嬉しくもあると同時に、感無量でもあった。彼は高校・大学時代を通じて、私のクラスでそう目立った存在でもなかったし、将来彼がはたしてピアニストとしてやっていけるのかどうかさえ心もとなかった、というのが当時の正直な印象だった。それから20年以上もたった頃か、一度彼のヴォルフシリーズのコンサートを聞いて、その変わりように私は自分の耳を疑ったほどだった。
人の一生は長い。大学時代の成績やピアノの出来がいいか悪いかだけでは将来は決まらない、ということをこれまでの多くの生徒からいやというほど経験させられた。そのなかでも松川君はとくに遅咲きの桜なのだろう。いまは、何か、最初のスタートが悪いと一生格差がついてまわる、ともいわれるいやな時代。こういう素晴らしい先輩を見て、なに、大学時代など少々ピアノが下手でもなにほどのことはない、まあいまにみておれ、といまのところ多少出来の悪い後輩たちを勇気づけることだろう。
2008-01-06 18:04
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コメント(4)
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新年早々すばらしいニュースですねえ。
Wolfを継続して取り上げられるなんて、すごいです。
私もなにか一つのことを信じて
頑張って自分のペースを守って、
きちんと生涯続けて学んでいきたいと思いました。
後輩の一人で、勇気づけられてます、頑張ります!
by K. (2008-01-06 23:30)
あれ、Kさん、あなた、今ヨーロッパだったよね。いえ、まあ、あなたにも元気づけられてる後輩はいっぱいいるはずです。
人間、いくつになっても、まだなんか可能性はある、と信じてやってる限り、可能性は閉ざされませんが、もう年だから、と思ったとたん、あるはずだった可能性すら閉ざされることもあるのでしょう。
by klaviermusik-koba (2008-01-07 09:53)
松川さん、おめでとうございます^^
実は、今年のLiebeslieder op.52のバリトンの方のピアノがいつも松川さんで私も何度か聴いております。青森公演にも松川さんが何度もされています。
2006年、ルーテル市ヶ谷にてシューマンの歌曲を歌われた際に、松川さんのピアノに感銘を受けました。そして、打ち上げの際に先生のお話になったのですが、「まだ、あそこ行ってるの?」
と松川さんは私にお話しされ、「僕のことはあまり話さないで・・・・(笑)」と言っていました。
このブログを拝見して、本当に嬉しい限りです。
というわけで、今年は私も歌曲伴奏トライに「喝!」入りました。
by ake_i (2008-01-07 10:27)
これは私の憶測に過ぎないのですが、多分、かれの成長の蔭には奥さんの力がかなり影響力を持っているのではないか、とにらんでいます。
by klaviermusik-koba (2008-01-07 13:30)