SSブログ

楽譜のコピーについて [音楽全般]

 ふだん我々が何気なく当然のごとく使っている楽譜のコピー。実はこれのために楽譜の出版社が存亡の岐路に立たされている。今日、日本著作権協会の依頼で、コメントをする羽目になった。実は私自身、この依頼に応じるのに内心忸怩たる思いがなかったといえばウソになる。しかし、自分もきちんとこの問題に向き合ってみる必要がある、という思いもあって取材に応じることにした。

 コピー譜を使うことがすべて違反になるわけではない。個人的に使う楽譜を、レッスンのため、いろいろ書き込みのため、そのほか、生徒に個人的に渡す、くらいまでは合法なのだ。問題はそれを何10部、何100部とコピーして合唱や吹奏楽のパートに使われるのが一番深刻らしい。それはそうであろう。100人の合唱団が、1冊だけ楽譜を買ってその必要な曲だけをコピーして使われたら出版社は立ちゆかない。そこで、どこまでが合法的で、どこから先が違反ということを明確にし、合唱団などが使う大量の楽譜は、やはりそれぞれ個人が買うようにしないと、必要な楽譜すら供給されなくなってしまう、というわけだ。そうなれば最終的に困るのは、楽譜のユーザーである我々演奏家や教師であり、音楽の勉強をする学生なのだ。

 これには出版社、作曲・編曲家、ユーザーの思惑が相矛盾するところが多く、なかなかスッキリした結論、というわけには行かない。楽譜出版社はボランティアでやっているわけではない。一企業である。それでも、新しい知られない作品も採算を度外視して、使命としてやっている一面もある。これまではその分、爆発的に売れている作品によってかろうじて全体として支えられていたが、その作品がコピーでまかなわれ、楽譜が売れないという事態になっている。

 いっぽう、著作権やコピーなどどうでもいいから、どんな手段であれ、ともかく自分の作品を多くの人に知ってもらいたい、という人もまた存在し、こういう人たちにはコピー禁止が、自分の作品を知ってもらうハードルを高くしている。今日の議論ではこれという結論は出せなかったが、問題はは多岐にわたり、考えさせられることが多かった。
nice!(2)  コメント(3)  トラックバック(0) 

nice! 2

コメント 3

れいこ

高校生の時に、担任の先生から「あなた方が楽譜を買わなければ必要な楽譜すら出版されなくなる恐れがある、今必要な楽譜を買う事はその楽譜を手に入れるためだけではなく、将来自分が欲しい楽譜を手に入れるための投資でもある」と教えられました。
この言葉が私の胸に「ズキッ!」っと刺さっています。

少なくとも、学校や合唱団、吹奏楽等大勢の方を指導する立場にある方はこの件についてしっかりと生徒さんや団員の方に説明する義務があるのでは?楽譜出版社の懐具合なんて、説明されなきゃ考えもしない方が多いんじゃないでしょうか?


by れいこ (2008-05-28 23:23) 

ake_i

驚いたことに最近はインターネットから楽譜をコピー出来るようで、今回それを使用するハメになりました。どうしても楽譜が楽器店から入手出来ずに、伴奏譜をネットから急きょ、引っ張り出しました。こういった方法も、教えられなければわからなかったことですが・・・・
私はインターネットにウトイのですが、いろいろな方々は様々な利用をされているようでネットから音源を録音したりしていることを聞くと楽譜にしろCDにしても販売する側は窮地に立たされること間違えないと何となくではありますが思っていたこの頃です。

梅雨入りしたようです。お身体を大切にされますように・・・


by ake_i (2008-05-29 09:27) 

klaviermusik-koba

れいこさん
>実際のところ、出版社は大変な中まだよく頑張っていると思いますが、それも限度があるでしょう。

ake_iさん
>これからはそうなると思います。楽譜を買わなくても、インターネットでダウンロードすれば、ユーザーも楽だし、それによって、相応の料金が自動的に出版社や作曲家に(もし著作権があれば)支払われます。将来はこれが主流になるような気がするのですが。

ただそれによって従来のクラシックの標準的な楽譜がすたれることはないと思います。まれにしか演奏されないものはこの方が合理的です。それのちょうど中間的なものもあって、オンデマンド方式、というのですが、楽譜としては売っていないけど、注文できちんとした製本にして必要な部分を必要なだけ送ってくれる、という制度も確立しつつあります。でもこれはまだ水濡れに弱い、とか、1曲だけだとページ数が少ない割には割高につく、という難点があります。
by klaviermusik-koba (2008-05-29 10:16) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。