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ポーランド報告(2) [ショパンコンクール]

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 ショパン生誕200周年、ということで、さぞ華やかな飾り付けがあるか、と会場のフィルハルモニアに近づいてみても普段と何ら変わったことはない。会場内部にしても普段通りか、それよりもむしろ地味なくらいである。ステージや会場内部にも花飾り一つ見当たらない。これがもし日本だったらどんなにケバい装飾が施されるかを想像してみると面白い。

 しかし、コンクール本体のレベルの高さは私の予想をはるかに超えていた。私は第2予選から第3予選まで聞いたので、すでに第2予選の時点では一定以上のレベルのピアニストしか残っていないのは確かだがそれにしてもここまでとは予想していなかった。

 今回の特徴の一つは審査員の数、とくに開催国のポーランド人の審査員が減ってジュネーブの国際コンクールの規約に定める、「国際コンクールの条件を満たすためには開催国の審査員の数が全体の30パーセントを超えてはならない」にほぼ合致し、ショパンコンクールも名実共に国際コンクールとなった訳である。この改革は第3次までの審査結果を見る限り成功であり、全体としてみるとほぼ妥当な結果だと云える。

 世界からあらゆる国の人があらゆるショパンを弾く訳だが、今回も私は国の名指しこそしないが、テクニックこそ抜群であるものの、ここまでショパンをゆがめて解釈するか、もしくはショパンなどどうでもよくてただただ自己顕示欲だけのためのピアノ、ショパンの書いたテンポもダイナミクスも、時には音符さえも無視して勝手放題に変えてしまい、聞いていて腹の立つ演奏は少なくなかった。以前なら入賞、もしくはいい線までいっていたのが今年は第2、第3の予選でことごとく落とされた。何しろ人よりも少しでも目立つのがいい、という最近の演奏の醜悪な傾向に一石を投じた意味は大きい。

 ファイナルに残ったピアニストはショパンをそれぞれ自由に解釈しているものの、基本的な線は決して踏み外さないぎりぎりのところでとどめた演奏だった、と総括できる。

ファイナリストの10名をプログラム順にここに列記する。
ユリアナ・アヴデーヴァ(ロシア)
エヴゲニー・ボザーノフ(ブルガリア)
フランソワ・デュモン(フランス)
ルーカス・ゲニュサス(リトワニア)
ニコライ・コジャイノフ(ロシア)
ミロスラフ・クルチシェフ(ロシア)
ダニイル・トリフォノフ(ロシア)
ヘレーネ・ティスマン(フランス)
パウェル・ワカレツィ(ポーランド)
インゴルフ・ヴンダー(オーストリア)

圧倒的に旧社会主義国家、とくにロシアが強い。エントリー数では一番数の多かった日本人は残念ながら3次予選までは誰も残れなかった。一時、ショパンコンクールはこれからはアジア勢の時代か?と云われたこともあったが、今回はそれに冷や水を浴びせた結果となった。が、冷静に見るならば先に述べた通り、審査員は公正、妥当な判断を下した、と私は見る。
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