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諸井誠のピアノ作品 [ピアノ音楽]

 作曲家、諸井さんは私の数年先輩であるが、私がまだ学生の頃から、当時まだ誰も手がけなかった電子楽器(今のシンセサイザーの原点になるのであろう)のための作品「7のヴァリエーション」をものするなど、一番先鋭的な作曲家の一人だった。とはいえ、同時にバッハやベートーヴェンなどの古典の研究も独自の視点を持っていて、私とは若い頃から親交があり、それは今も続いている。

 諸井さんのピアノコンチェルトに匹敵するもう一つの大作として、ピアノと鼓を独奏楽器とする「協奏交響曲」がある。こんな独奏楽器の組み合わせも諸井さんならではの発想であろう。これも私は自分のリサイタルでオーケストラを使って演奏している(プログラムの後半はブラームスの1番のコンチェルトとなっている)が録音が残っているかどうかはわからない。

 ピアノ独奏曲の彼の最高傑作は「ピアノのためのαとβ」であろう。厳格な12音技法で作られているが、いまみると非常に古典的に響く。これも私は好きな作品で(古典的であるがゆえに新しい)たびたび演奏してきた。ほかには、「Klavierstück」、ユーモア溢れる「いろはたとえ八題」、「ソナチネの花束」その他があり、大体彼の主なピアノ作品を私は演奏をしてきたことになる。それだけ私と気質が合った、というより、素晴らしい先輩、諸井さんのの柔軟な発想に啓発されつづけてきた面が大きい。

 今回のCDに収められた作品にしても尺八や鼓のような和楽器、オンドマルトノや当時まだあまり一般化していなかったチェンバロ(当時はまだヒストリカルなチェンバロ、という発想はなかったのでおそらくこの演奏でもモダン・チェンバロが使われている)など、面白い素材は何でも使ってみる反面、伝統的なピアノやヴァイオリンのような楽器とも正面から向き合っている。一時代を画した日本の作曲家の記録として貴重なものといえる。

 そういえば今夜、諸井さんが会長を務めるアルバン・ベルク協会の理事会がある。私も理事の一人にされていることを忘れていた。しばらく振りに諸井さんの毒舌を聴けるのが楽しみ。
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