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江崎昌子さんのショパン [ピアノ音楽]

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江崎昌子さんのショパンの4曲の管弦楽付きの作品のCDが完成し発売になった。私が弦楽合奏ヴァージョンに編曲したものである。こうして聞いてみると、江崎さんのピアノはきちんとした構成を持ちながら、自然な音楽の流れがあり、バランスの取れた実に魅力的なショパンに仕上がっている。それと合わせて重要なのが瀬崎明日香さんの率いる弦楽合奏が実によくピアノと溶け込み、寄り添い、ときに必要なパワーを発揮する、室内楽というもののよさがわかる。ショパンの管弦楽法の悪さもあって、オケパートがいつもぼんやりして、オケがあってもなくてもどうでもいいような役割に私はこれまでなんとはなしに不満を持っていたのである。

指揮者を通してでなく、一人一人の優れた奏者が自分の役割を意識することで、ショパンの緻密な音楽がこれほどはっきりした形で再現されたのは、まさに編曲者冥利に尽きる。私の意図した以上の効果が実現されたと言っていい。ショパンがワルシャワを離れてから管弦楽付きの曲を書かなくなったのは、一つにはショパン自身のピアノがあまりに繊細で、管弦楽がつくと自分の音楽の良さがすべてうまくいかない、と感じたのであろう。オーケストラに邪魔される、というところは確かにあったと思われる。ただ数は少ないがチェロを伴った作品やトリオもあるし、また将来ヴァイオリンソナタも書く計画も持っていたみたいなので、ショパンはピアノ以外の音楽に全く興味を持たなかったわけではない。

ライナーノートにも書いたが、弦楽四重奏だけでは現代のフルコンサートピアノとはこの場合に限るといかにもバランスが悪いので、第二ビオラとコントラバスを追加してハーモニーに厚みを持たせる工夫をしたのが功を奏した点は大きい。弦パートは6人の奏者を必要とする。ショパンがカルテットを伴奏に演奏した、という史実だけをそのままうのみに信じてしまうとショパンの使用したピアノ、プレイエルとショパンの繊細なタッチなど,ほかにも考慮すべき条件を見落としてしまう。現代の私たちの現実にそぐわないことを考えるべきである。

これはこれで、これまで見えなかったショパンの管弦楽作品の別の側面が明らかに見えるようになった、と私は感じている。ぜひ一度お聞きになって見てください。あまり知られないショパンのこれらの曲の良さに気づいてもっと演奏されるようになれば、と願うのである。
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通りすがり

先生、江崎さんではないですか?
by 通りすがり (2012-10-28 14:06) 

klaviermusik-koba

間違えました。ご指摘ありがとうございます。すぐ訂正します。
by klaviermusik-koba (2012-10-28 21:20) 

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