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トーマス・テレフセン [ピアノ音楽]

トーマス・テレフセン(1823-1874)。ショパンの愛弟子の一人である。先だってアルフレッド・コルトー没後500年行事について当ブログで述べたが、過日、国立文化財機構理事T氏が来訪され、記念行事のご報告を受けたあと、雑談に移ってからなぜかテレフセンの話題になった。T氏のピアニストについての知識の博学はとうていなみのピアニストの及ぶところではない。「テレフセンの全曲録音があるはずだから」と言われて、2日もたたないうちに3枚のCDに収められたテレフセンのほぼ全曲集を送ってくださったのである。氏の博学もさることながら、その行動力の早さにはこれまた驚かされた。

テレフセンはショパンの晩年、イギリスやスコットランドの旅行に同行していた。当時ショパンは自分独自のピアノメトードの本を書く計画を持っていたが、ショパン自身にはもうそこまでの余力が残されていなかった。そこでこの計画を弟子であるテレフセンに託したのである。テレフセンもそれを実現すべく、仕事に取りかかったが「この仕事は私には荷が重すぎる」としてこれも実を結ばなかった。完成していたら,ショパン直弟子の伝えるショパンメトードということで、後世に大きな影響をもたらしたと思われるが未完に終わったのは実に惜しい。

作品1から44までのピアノ曲全部が収められている。テレフセンはノルウエー出身のピアニストだが、生涯のほとんどをパリで過ごした。初期の何曲かは明らかにショパンの影響が多く、耳当たりのいいサロン風小品の域を出ないが、中期以降大胆な転調を駆使するなど、独自の作風を示す。

以前に当ブログで、ショパンのもう一人の愛弟子、カール・フィルチュについてご紹介したことがあるが、フィルチュは弱冠15歳で他界したので独自の作風をもつに至るまで生きられなかった。テレフセンは51歳まで生きたから当時としては天寿を全うしたといえるだろう。一通り聞いてみたが、みるべき作品も決して少なくないので、これも日本ショパン協会で実際に演奏の機会が持てれば素晴らしいと思う。
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