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「平均律」と「フーガの技法」の違いについて [音楽全般]

「フーガの技法」に長年取り組んでいて、その面白さは尽きることがないが、「平均律」をはじめとする、それまでバッハが書いてきた膨大な数のフーガと「Die Kunst der Fuge」の間には明らかな一線を画する違いがある。この面白さのためにますますのめり込んでいるのかもしれない。

その違いを最小限の言葉で言い表すなら、他のフーガに比べて「ストイック」「遊びが最小限である」「たった4小節の一つの主題から音楽を宇宙の彼方まで展開できる限界への挑戦」といったところか。そのため、逆に平均律のフーガをこの視点からみると、いたるところ遊びだらけで、今にして思うとそれをバッハ自身が楽しんでいるように見える。

バッハが自らに課したがんじがらめの手法を極限まで厳守し、しかもどの一音も音楽的でない音がない、無駄な音もなければ足りない音もない、というのは真に驚嘆すべきことである。この理解されにくく、奇跡のような音楽も識者ばかりでなく、最近一般にも認識され始めたようである。日本でもピアノ用の楽譜が出版された、というのはその表れかもしれない。先ほど挙げた三つの特徴のうち、「ストイック」という点がとくに私には気に入っており、かつ重要な点であると思う。私はいずれ誰かに聞いてもらおうというつもりでこの曲の勉強に取りかかったのではない。ひとえに老境に入った自分のためだけである。とはいえ、やはり面白さをひとに伝えたい、という欲求を抑えることはできにくく、おりに触れて人前でも様々な形で弾いてきた。

もとより、この謎めいた曲に関しては古来様々な学問的研究がなされており、可能な限り私もそれらの文献に目を通すようにしているが、それにしてもわからないことが多すぎる。ただピアニストとしては学問的にわかっていないことが多いとしても、音に出して楽しむことが出来るのはこれ以上の愉悦はない。人前で弾く、弾かないにかかわらず。
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