ミハイル・プレトニョフ [ピアノ音楽]
プレトニョフ、といえば19歳でチャイコフスキーコンクールで優勝して以来、天才的ピアニストとして知られてきたが、かなり前から、指揮者として活動するため、としてピアノ演奏活動は休止する、と宣言していた。ところが最近、モスクワのチャイコフスキーホールの片隅におかれたカワイピアノをみて、こんな素晴らしいピアノがあるなら弾いてもいい、と思いなおしてピアノ演奏を再開した、というのである。これはカワイピアノの宣伝筋から聞いたものではなく、コンサート後のレセプションで直接プレトニョフから聞いたのだから本当なのであろう。事実今回の日本を含むアジアツアーでは全部カワイピアノが使用されたようである。
コンサートは津田ホールで限られた関係者だけに無料で招待されたもの。プログラムはシューマンのフモレスケを中心にモーツアルトやベートーヴェンのソナタなど。演奏はもちろんどれも素晴らしく、アンコールで弾かれたショパンのDes-durのノクターンは絶品と言っていい。レセプションは京王プラザホテルで開かれたが、ごく少人数のこじんまりとした雰囲気だったので直接彼からいろいろ面白い話を聞くことができ、話はずいぶん盛り上がって会が終わったのは11時を回っていた。
私が一番たずねたかったのは、「あなたをもう一度ピアノを弾こう、と決心させたカワイピアノとスタインウエイとの違いは何ですか」。これに対してずいぶん長い答えが帰ってきた。要約すれば「まず、アクションが違う。ピアノ以下の弱音、最弱音、最最弱音のコントロールが自分の思い通りに完璧になる。次に「音」。スタインウエイに不満を持っていたsinging soundがカワイピアノはすばらしい、これこそがピアノにとって最も重要なこと」。そして最近のスタインウエイは「全く歌わない味も素っ気もないもの」とこき下ろした。ちなみにプレトニョフ自身は自宅でブリュートナー(何年ごろのものかは聞きそびれた)を使っているそうだ。
ここではプレトニョフ発言に対する私のコメントは差し控える。だいぶん昔になるが、リヒテルがヤマハのピアノを絶賛して愛用したことはよく知られている。いずれも外国のピアニストによって日本製のピアノの真価が知られるようになったが、肝心の日本のピアニストはスタインウエイ一辺倒である。深読みをすると、ヤマハとカワイはライバル関係が強いのでどちらかのピアノ会社に肩入れをしすぎると自分の首を締めるようなことになりかねない、という本能が働くのかもしれない。しかしふたつの大きな会社が互いにライバル意識を持って長年切磋琢磨した結果、今の状況にまできているのだ。この高い水準は中国にもいまやずいぶん多くの中国製独自のピアノ会社があるにもかかわらず、中国も韓国も絶対真似のできない、日本で一般にはあまり知られていないが日本の誇るべき「耳」と技術、といえる。半世紀以上にわたってその進展を見続けてきた私は、少々技術が流出したくらいで真似のできるような皮相なものではないことぐらい理解できる。
レセプションでは他にもびっくりするような興味深い話題が山ほどあって、楽しい時間だったが全部ここでご紹介し切れないのを残念に思う。
コンサートは津田ホールで限られた関係者だけに無料で招待されたもの。プログラムはシューマンのフモレスケを中心にモーツアルトやベートーヴェンのソナタなど。演奏はもちろんどれも素晴らしく、アンコールで弾かれたショパンのDes-durのノクターンは絶品と言っていい。レセプションは京王プラザホテルで開かれたが、ごく少人数のこじんまりとした雰囲気だったので直接彼からいろいろ面白い話を聞くことができ、話はずいぶん盛り上がって会が終わったのは11時を回っていた。
私が一番たずねたかったのは、「あなたをもう一度ピアノを弾こう、と決心させたカワイピアノとスタインウエイとの違いは何ですか」。これに対してずいぶん長い答えが帰ってきた。要約すれば「まず、アクションが違う。ピアノ以下の弱音、最弱音、最最弱音のコントロールが自分の思い通りに完璧になる。次に「音」。スタインウエイに不満を持っていたsinging soundがカワイピアノはすばらしい、これこそがピアノにとって最も重要なこと」。そして最近のスタインウエイは「全く歌わない味も素っ気もないもの」とこき下ろした。ちなみにプレトニョフ自身は自宅でブリュートナー(何年ごろのものかは聞きそびれた)を使っているそうだ。
ここではプレトニョフ発言に対する私のコメントは差し控える。だいぶん昔になるが、リヒテルがヤマハのピアノを絶賛して愛用したことはよく知られている。いずれも外国のピアニストによって日本製のピアノの真価が知られるようになったが、肝心の日本のピアニストはスタインウエイ一辺倒である。深読みをすると、ヤマハとカワイはライバル関係が強いのでどちらかのピアノ会社に肩入れをしすぎると自分の首を締めるようなことになりかねない、という本能が働くのかもしれない。しかしふたつの大きな会社が互いにライバル意識を持って長年切磋琢磨した結果、今の状況にまできているのだ。この高い水準は中国にもいまやずいぶん多くの中国製独自のピアノ会社があるにもかかわらず、中国も韓国も絶対真似のできない、日本で一般にはあまり知られていないが日本の誇るべき「耳」と技術、といえる。半世紀以上にわたってその進展を見続けてきた私は、少々技術が流出したくらいで真似のできるような皮相なものではないことぐらい理解できる。
レセプションでは他にもびっくりするような興味深い話題が山ほどあって、楽しい時間だったが全部ここでご紹介し切れないのを残念に思う。
2014-06-01 09:53
nice!(1)
コメント(2)
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そういうときのコメントほど、
“面白い”内容のものはないですよね。
先生が素直に羨ましいです(笑)。
by K. (2014-06-01 12:15)
変なことを羨ましがられるのですね(笑)
by klaviermusik-koba (2014-06-01 16:57)