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最古の44 [メルクリン]

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 ミュンヘンのKarlsplatz,通称StachusのObletterで1962年ごろ購入したもの。私の最古のものの一つだがこれを手に入れたときは、E型の大型機関車がメルクリンの最小半径を苦もなく通過するのをみて、二つに折れる台枠のアイディアとその確実な動きに驚嘆したものだ。商品番号は「3047」。

 これをみているといろいろなことが思い出されて感無量になる。私が間借りをしていたミュンヘンの家の、天井裏を使わせてもらって、小さいながらも固定レイアウトを持っていた。もとより、この44も当時の主役のひとつであり、子供たちとも一緒に遊んだ。食うや食わずの貧乏留学生がなぜこんな贅沢が出来たか。

 私が当時持っていた56年型のVWは家族との話し合いで車庫をただで借りる代わり、必要に応じて彼らに使わせてもいた。そのうち、家主がある日、私にこう持ちかけたものだ。「どうだ、ヒトシ、商売をしようじゃないか。あなたのVWを私にただで譲る。その代わり、あなたがこれから何年ここに滞在しようと、家賃は一切無料とする」。もと小沢征爾が使っていたもの、という因縁はあるにしても、一度エンジンまで載せ替えたかなりの時代物である。これまで、誰が持ち主だか分からない使い方をお互いしていたから、私に否やはない。どちらが持ち主にせよ、使ったあとはガソリンは満タンにして戻しておく、という不文律がいつの間にかお互いの間に出来ていた。

 もうそれ以前から家賃は払ったり払わなかったり、しかも食事時になると、必ずお呼びがかかった。もうほとんど家族同然で家賃はただ、食費もただ、と要するに居候なのだ。それも単なる居候ではなく、家族の大事なイベントには必ず同席することになっていた。そんなふうで生活費がほとんどかからなかったので、高価なメルクリンも時には買うことも出来た。そしてその上固定レイアウトの場所まで借りていた。なぜ一般に勘定高いといわれるドイツ人のなかでこんな生活が出来たのか、いまもって私には分からない。私が帰国したあと、何人かの日本人が間借りをしたらしいが、どうやら心暖かいドイツ人のもとで、私のように家主といい間柄で暮らした、とは聞いていないし、むしろあまりいい評判はどちらからの側からも聞こえてこなかった。残念なことだ。

 ドイツは私の第2の故郷、とはオーバーではなく、実際そんな生活を44ともども満喫していた。


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コメント 4

N

初めまして。たのしく拝見させてもらっています。1台の機関車を軸にして、その人の人生の物語を語ることが出来るって、すばらしいですね。メルクリンには、それに応える重みがあると思います。44型は私も大好きで、125周年記念で復刻されたのをデジタル化して走らせています。
by N (2008-08-28 01:11) 

klaviermusik-koba

Nさん
はじめまして。たしかにメルクリンの進化をみていると、自分もそれだけ年とともに進化したか? と反省させられます。
44型は01とともにメルクリンの定番ですが、カタログをみていると、まあこんなにもいろいろなヴァリアンテがあるもの、と感心します。それだけ多く生産され、欧米各国に受け入れられたのですね。
この44はもうアナログのまま、ずっとおいておこうと思っています。
昨年、ある大学祭の鉄道模型のコーナーでしばらく振りのアナログ展示をやったときもよく走ってくれました。
by klaviermusik-koba (2008-08-28 08:42) 

Akira

楽しく拝読しました。家主さんは気を遣わせないように配慮したのでしょうね。私も9年滞在して2軒の家庭にホームステイさせていただき、特に2軒めの家庭では色々と家族の一員として接してもらいました。(家賃がタダというのはなかったですが、食事込みでしたので、朝晩のドイツの家庭料理を楽しみました)
就職してアパート住まいになってからは、ご近所の方とお付き合いするようになり、その1軒の家庭では本当に家族のような付き合いをさせてもらったのは、今の日本では考えられないことです。ある意味人間的だなあと...。
ただ、ドイツでも夢であるメルクリンのレイアウト作成ができなかったのは残念な限り...。
by Akira (2008-08-28 09:33) 

klaviermusik-koba

ドイツで食事込み、というのはめずらしいですね。ドイツ人は一見ぶっきらぼうだけどいったん心許せば、心の温かい人たちが多いです。特に南ドイツはある意味、日本人に通じる、義理とか、人情を大事にする人たちが多い、という感じは持ちました。ドイツ人は日本人と違って万事合理的、ドライだ、と聞いていたのとは大きなちがいでした。
by klaviermusik-koba (2008-08-28 12:53) 

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