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札幌日記 [プライベート]

 もう寒いと覚悟してきた札幌、まだ意外と暖かく、紅葉が色づき、天気はいいし、秋の北海道もまたなかなかすてがたい。
 常宿にしている札幌ガーデンパレスホテル前にたむろしているタクシーにいつも通り乗るのだが、札幌は町が狭いせいか、営業範囲がほぼ決まっているのか、これまでに何度も同じ運転手のタクシーに乗り合わせることが多い。

 今日の運転手はこれまで何度も乗り合わせ、すっかり顔なじみになっているHさんという人である。どうやら私と同じくらいの年格好なのだが、聞けばとてもいい人生を送っているらしい。北海道までバイクや自転車で旅行してくる若者たちを、自分の家へただで泊めてやるのが趣味の一つで、そのため、もう全国に、そういう若い友人たちのネットワークを持っているようなのだ。中にはもう社会で重職についている人もいるという。

 ときおり、日本のどこかへHさんが奥さんと一緒に旅行を計画すると、どこでもバイク旅行で来た知り合いの若者が何人も集まってくれて、一緒に旧交を温めるのが何よりの楽しみ、という。彼が全国どこへ出かけようと、必ずそういう知り合いが何人かいるのだ。そのほかにまた彼には別に俳句仲間のサークルもあるので、こういうタクシーの仕事をしていても毎日が楽しくてしようがない、という。車内にはHさんの手製の野草の解説のノートが置いてあって、なかなか楽しい内容になっている。

 タクシーの運転手、というと、とかくきつい仕事で、淋しい人生のイメージがつきまといがちだが、こういう話を聞くと、人生、いくつになっても工夫次第で充実した人生が送れるのだなあ、という生き方を教えてもらった気がして、心が温かくなる。
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