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赤いセーター [プライベート]

 毎年この寒い時期、自分の誕生日が近くなると思い出す。私の愛用している真っ赤なセーターはもう14年目になる。なぜ14年と正確に憶えているかというと、私の還暦のときのお祝いに生徒たちが盛大なお祝いのパーティーを開いてくれ、記念に赤いチャンチャンコの代わり、ということだろうがプレゼントしてくれた思い出深いものである。

 私は気に入ったものは大切に長く着る、という習慣がある。これもそのひとつだがまだまだ数年は十分に着られそう。いや、今後このセーターと私と寿命がどちらが長いか?というべきであろう。どうやらこいつより私の方が長持ちという点では負けそうな感じがする。

 G大の教授時代、コンチェルトの試験で、ある学生がブラームスの一番のコンチェルトを弾くことになった。私はそのときの第2ピアノを受け持った。この時代、第2ピアノを弾くのは先生でも学生でもいいことになっていた。私にとって試験官としてじっと椅子にすわったままというのは、耐えがたい退屈な仕事なので、ピアノを弾いている方が気がまぎれる。そのためことごとく自分の学生の伴奏をうけもった。多いときは5曲くらいもやったことがある。

 ブラームスを弾く女子学生は赤いセーターと黒っぽいスカート、といういでたちだったが、たまたま私がその日はこの赤いセーターに黒っぽいズボンだったので、はからずもペアルック、ということになってしまった。二人で試験会場に姿を現したとたん、先生たちも学生たちもゲラゲラ笑い出し、なんかこれからブラームスを弾く、という雰囲気ではなくなってしまった。笑いがおさまるまでいっとき椅子に座すわったまま待たなければならなかったのである。こんな思い出も詰まっているセーター、あだやおろそかにできようか。

 
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