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音楽構造の研究 [音楽全般]

諸井三郎著「音楽構造の研究」

 この本は市販されたのかどうかわからない。諸井三郎先生が逝去されたあと、遺稿を整理していたら3巻にも及ぶ膨大な原稿が発見され、これを埋もれさせるにはいかにも惜しい、とその弟子にあたる人たちが中心になり、出版社は音楽之友社だが、おそらくは洗足学園大学がこの費用を全額負担して完成させたのであろう。

 私は洗足学園から寄贈を受けたのだが、いずれ読もうと思っているうちに20年もの年月が経ってしまったことを悔やんでいる。グレゴリオ聖歌からブーレーズにいたる、音楽構造を巨大な視点と、一方詳細な視点とを歴史的に俯瞰しながら音楽の構造をみつめる実に驚嘆すべき集大成である。といって決して理屈一点張りの本ではない。音楽の美しさ、すばらしさはどこから来るかを追究する哲学がある。一言ではとても言えないがこれだけの研究書が日本でこれまであっただろうか。実をいうと私は数年前からぼつぼつ読み始めているのだがとても読み飛ばすことのできる代物ではない。

 いま読んでいるところはスウェーリンクのファンタジアとフレスコバルディのカンツォーナの比較の部分である。 たとえばファンタジアがいずれフーガに発展し、カンツォーナがのちにソナタに発展する、という視点は実に示唆に富んでいる。3巻目のシェーンベルクの12音技法の分析(批判も含めて)もなるほど、と思わせる。この著書、気楽に読めるものではないだけに、果たしてどれだけの人がまじめに読んだだろうか。(札幌)



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