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魔法使いの弟子 [音楽全般]

 19世紀末に活躍したのフランスの作曲家ポール・デュカ(デュカス、とも)の作曲したゲーテによる交響的スケルツォ「魔法使いの弟子」(1897)という傑作がある。魔法使いが箒に水を運ばせる呪文を弟子に教えたのだが、その弟子は水運びを止めさせる呪文までは教わっていなかった。師匠のいない間に、弟子は箒に水を運ばせる呪文をかけて運ばせることが出来たのはいいが、いざ止める段になるとどうやってみても水運びが止まらず、家中が水浸しになってお手上げになる、というユーモラスな物語の筋にデュカスが音楽をつけたものだ。「スケルツォ」という曲名が曲の性格を端的に物語っている。

 この物語はゲーテの創作ではないが、古くからある民話をもとに脚色したものらしい。古来、水は貴重なものであったからいい水が楽に調達できたらどんなにいいだろうか、とは誰しも考えたことからこんな話が生まれたのであろう。

 福島原発のいまの流れをTVで見るたび、私はこの音楽を思い出す。20世紀、人間は原子力、というほとんど無限に近い夢のエネルギーを手にしたが、これが今回のごとくいったん暴れだしたらもう手のほどこしようがない。暴れだしたときどう止めさせるか、ということまでは人類は学んでいなかったようである。20世紀の魔法の呪文は魔法使いが家に戻ってきてやめさせる呪文を唱えてくれればいいのだが、これは望み薄である。魔法使いの「弟子」の愚かさは現代人にも通じるというにはあまりにも深刻な教訓であったと思わざるを得ない。
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