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ランメルムーアのルチア(3) [オペラ]

 ずいぶん混乱したことが見て取れる。演奏の話ではない。歌手やキャストや指揮者が変わり、最終的なキャスト表がペラ1枚のパソコン印刷のにわか作りである。本来のプログラムにするはずであった立派な冊子は無料で配られた。本来なら当然何ヶ月も前にソールドアウトのはずなのに8割程度の入りである。もったいない。招聘先であるジャパン・アーツの社長に多少の裏話を聴いたが実現までに薄氷をふむことの連続だったようである。特別な敬意を表したい。

 主役のルチアはDiana Damrau,エンリーコはZeljko Lucic,エドガルドはPiotorBeczalaなど、さすがメトだけに国籍もさまざま。18:30から22:00まで、十分に堪能したが特に重要な役柄の3人、急な変更にもかかわらず素晴らしい歌唱と演技を堪能させてくれた。最近は日本でも本格的なオペラはそうめずらしくなくなったが、やはりこのメトのクラスとなるとそうそう日本で見られるものではない。本当は私はオペラは大好きなのだが、半年も前からチケットを予約する段になると、半年後の当日はたして行けるのかどうかを考えるとほとんど絶望的に近い。その意味では今回はまことに幸運であった。

 どこのオペラも経費の関係で装置自体は簡略化の傾向にあり、やむを得ないのだろうが今回は少なくとも、へんてこな現代風演出だけはされていなかったのが何よりも良い。オペラはたいていの場合、場所と時代が設定されているのだから、それを無視されるのだけは私は後免こうむりたい。

 細かく言い出すときりがないが、一つだけいえば第2幕第5場の「ルチア狂乱の場」のルチア役は全く期待を裏切らなかった。ここをみただけでも充分その価値はあったと思う。ただ、死んでしまったはずのルチアの亡霊とおぼしき女性が胸を切って自殺するエドガルドのそばにいる、という演出は理解はできるが多少の違和感はぬぐえない。(東京文化会館)
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HUH

Don Carlosを土曜日に聴いてきました。時間がなくて、ストーリーと所謂聴きどころをチェックしただけでしたが、心から楽しむことができました。
土曜だけあって、空席はそれほどない印象でした。何はともあれ、こんな状況でも、このような公演を実現させた招聘元の苦労を思うと、本当に経緯を表すしかありませんし、感謝したいと思います。
主役級5人のうち、当初の予定から3人が代わりましたが、いずれも代役というには失礼な素晴らしさでした。オペラを本当に単純に、これだけ楽しめたのは、この数年ないことでした。METの今回の演出は15年以上前からのもののはずですが、ごくごく自然で、音楽を邪魔しないのが良かったと思います。(現代的な演出でも良いものは多いと思いますし、必ずしも期待ではありませんが、やはりオペラは音楽が楽しめてこそ、と思います。音楽より目立つ、訳の分からない演出は願い下げ、と思っていします、)
by HUH (2011-06-22 01:42) 

klaviermusik-koba

Don Carlos私は実際にオペラを見たことはありませんが、ピアニストという職業上、いろいろなアリアはこれまで断片的には接しています。歌手の中には原発問題で神経質になって(体が資本ですから当然でしょうが)来日出来なかった人が多かったのですけれど、それでもあれだけの質の高さのものを実現出来るメトの奥深さはこういう事態にあってはじめてよくわかり、そういう意味ではよかったと思います。

いいオペラを堪能できたこと、お互い本当にしあわせでした。
by klaviermusik-koba (2011-06-22 09:06) 

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