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長崎の鐘 [Literature]

 今回の旅行は長崎から札幌へ直行した。いくら飛行機が速いといっても直行便がないので乗り換えの待ち合わせやら何やらで、やはりこれだけで1日仕事になる。機内で読むために空港の書店で長井隆博士の「長崎の鐘」を買う。この本は映画にもなり、その主題歌はヒットにもなったから、私の世代の大多数の人がこの本には何らかの形で接しているはずである。長崎の原爆に遭遇し、原子病(と彼は呼んだ)のさまざまな体の不調に悩まされながらも精力的に医療活動を続け、二人の遺児を残し、若くしてなくなった。

 原爆が長崎に投下された瞬間から、その後の地獄といってもいい凄惨さを余すところなく伝え、もう一方で科学者、医師、キリスト教徒としての目で冷徹に原子力というものの威力を見据えている。ちなみに戦時中日本でも原子力の開発は進められていたが、金ばかりかかってものになりそうもない、ということで中止を命じられている。

 原子のもつ巨大なエネルギー、それに放射能については当時のほとんどの日本人は何も知らなかった。投下された原子爆弾も政府の規制もあって「特殊爆弾」と呼ばれていた。そしてこの本はあまりのリアリティのゆえ、戦後アメリカの占領軍によって発売禁止にもなった。

 放射能のもつ人体への影響を、即死、数時間後の死亡、1週間以内での死亡、それ以後の放射能が原因の白血病のガン死にいたるまで,いまわたしたちが福島原発の事故で遭遇している様々な放射能の直接的な影響がこのときすでに科学者,医学者の目で詳細に観察されている。改めて読んでみて、啓発されるところが多い。今回の大震災,福島の原発事故と頭の中で2重写しになったような錯覚を憶えた。
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