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方丈記 [Literature]

 「行く川の水は絶えずして、しかももとの水にはあらず」の書き出しに始まる、鴨長明の「方丈記」がこのところよく読まれているという。何しろ、900年も前の文献だから私の貧弱な国語力でどこまで正確に読めているかは保証の限りではないが、まあおおよそのことはわかる。昨年は大地震、原発事故、台風、大雪など史上まれな多くの災害が重なったこともあって、日本という国がいかに過酷な自然環境に置かれているかが改めて身にしみ、この古典から何かを学ぼうとしている姿が伺える。

 「方丈」とは自分の身の丈、だからせいぜい2,3メートル立方程度の仮の小屋に住まう、という鴨長明の50才(当時としてはまれな長寿であろう)の出家の記である。立派な屋敷も財宝も、自然の猛威の前には無力であり、なにも当てになるものはないから、いつでも住まいを移せるような質素な生活がいい、という無常観が底に流れている。バブルでかつてない繁栄を見た日本、そしてだいぶん落ちぶれた日本の現状を見るにつけ、この書が人々の共感を呼ぶのであろう。

 数百年も続いた京の都が大火事で2/3も焼けてしまい、天皇が難波に都を移すがうまく行かなくてまた京に戻る、人々のうろたえる有様が描かれているが、もし東北大震災が東京で起こったならば、多分こうなるのであろう、と思い知らされる。誰も東北の地には興味を持たず、西の方ばかり考えている、というくだりはそのまま現代にも当てはまるのではないか。東京に原発を造らず、東北に持って行き、その災害に未だに誰も責任をとろうとしない姿は900年昔も今も変わっていないようである。
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