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ショパンの書簡 [日本ショパン協会]

 始めて本格的なショパンの書簡の日本訳が完成し、そのお披露目の会が関係者を集めて、日本プレスセンターで行われた。1955年に発行されたショパンの書簡集はポーランド語のオリジナル本体に不備が多く、邦訳もその時代はポーランド語を日本語に正確に翻訳出来る人が少なかったこと、などがあって、半世紀以上もたって新しい知見も取り入れながら刊行されたもの。壮大なプロジェクトである。これ以上のものは今後1世紀くらいは望めないのではないか、という力の入れようである。

第1巻 1816−1831(少年時代からパリ到着まで)
第2巻 1831−1841
第3巻 1841−1849

 現在、第1巻が10年の時間をかけて完成、日本語訳が東京外国語大学教授、関口時正氏とそのグループで2年を費やして日本語刊行の運びとなったことは喜ばしい。それ以後の予定はどうなっているか、という私の質問に対して、第2巻はショパン研究者イーゲルディンゲル氏(スイス在住)を中心にフランス語で刊行される予定なので、ポーランド語訳を待たずに直接翻訳が可能。すでにかなりなところまで進行しているので、翻訳も同時進行で始まっているらしい。全巻が完成するのは2020年の予定、という。ショパンの手紙の日本語訳は困難を極めたようである。そもそも1800年代のポーランド語が現在の言葉とちがっている上、親しい人に宛てた手紙だから、当事者同士でしかわからない文言やスラングが多い。さらにポーランドは2度の大戦や外国の侵略をうけて、相当の部分の書簡が爆撃などで消失してしまっている、など。ただし、ショパンに関する資料は、それを所有していたアメリカ在住の人などから、かなりのものがこれまで見つかっていて、ワルシャワのショパン博物館に寄贈されたりしているから、今後も新しい資料が世界各地で見つかる可能性もないわけではない。(なにしろ、バッハのカンタータの知られていなかった資料が日本で見つかって話題になったこともあるくらいだから)

 第2巻がフランス語で出される、というのはショパンがパリに移ってからなのでフランス語の手紙が多い、という事情にもよるのだが、ショパンの父のニコラ(ポーランド流にいえばミコワイ)はフランス人であるにもかかわらず、フレデリクもフランス語を母国語と同じように話せたわけではないらしく、日常会話でも手紙でも文法上、もしくは発音のミスが多かったらしい。これも困難な作業になろう。


 著者のズビグニェフ・スコヴロン氏が来日して翻訳者の関口氏とともに、刊行までのいきさつを聴けたのは有意義な会であった。ちなみに外国語で翻訳出版されるのは、日本が最初の国となる。

岩波書店、800ページ、18.000円

訂正: 私の聞き取りの不確実なせいで、コメントの通り、第2巻以降もポーランド語で出版されるが、当然フランス時代はフランス語の手紙はふえるので、フランス語の部分は先に日本語訳ができるであろう、とのことのようです。訂正してお詫びします。
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コメント 3

RH

はじめまして!書簡集翻訳に携わりました一人の平岩と申します。こうしてBlogに取り上げて頂きどうもありがとうございます。

大変僭越なのですが、一点だけ、掲載いただいた情報を訂正させていただきたく思いましてコメントいたしました。というのは、第2巻以降についても、原書はポーランド語で出版されることに変わりはない、という点です。
フランス時代を扱う第2巻以降は当然原文がフランス語という部分も増えますが、ポーランドでの出版にあたっては全てポーランド語訳がなされます(書簡については原語と併記で)。ただ、スコヴロン先生がおっしゃったのは、書簡原文や評伝の原稿がフランス語のものについては、何もポーランド語訳ができるのを待たなくても日本で和訳作業ができるだろうから、原書の完成を待たずに日本でも準備を進めてもらえるはずだ、というお話でした。
私たちとしても、この書簡集作成にあたっては「すべてオリジナル言語から訳出する」ことをモットーとしておりますので、そのあたりは今後とも信頼して頂いて大丈夫かと思います!

今後とも応援どうぞよろしくお願いいたします!

by RH (2012-04-22 12:18) 

klaviermusik-koba

RHさま、

ご指摘ありがとうございました。早速訂正文加えておきます。私の聞き間違いであったのだろうと思います。お詫び申し上げると同時に、今後のご成功を祈ります。
by klaviermusik-koba (2012-04-22 18:55) 

RH

唐突にぶしつけなご指摘でしたのにもかかわらず、早速のご対応どうもありがとうございました! 記者会見ではなかなか時間も十分でなく、聞き間違いをなさった、というよりは発言者側の方が言葉足らずだったせいで誤解を生んでしまったもの、と思っております…。
ちなみにフランス時代もショパンはポーランド語で多くの文通をしています。それらについても第1巻同様、ポーランド語から日本語になりますのでご期待いただければと思います。現時点ではまだ第2巻の和訳は開始されておりませんが、ポーランドより一刻も早く原稿が送られてくるよう、翻訳者一同首を長くして待っているところです。
by RH (2012-04-22 22:31) 

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