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幸田延の「滞欧日記」 [Literature]

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 さっそく、瀧井敬子さんから送って下さったのだが、これは実に面白い。学者らしく、幸田延がヨーロッパで聞いたコンサートの現地図書館の確認作業まで行われている念の入ったもので、当時の日本の音楽状況もだが、1900年前後(この日記は1910年頃)のヨーロッパの音楽事情、音楽教育事情を垣間見ることが出来るのは貴重な文献といえる。延さんはいろいろなレッスンの現場を見学して克明に記録にのこしている。

 パリのコンセルヴァトワールで、ガブリエル・フォーレ学長同席の卒業試験について、各楽器の一人一人に曲目とコメントなどがついていて、幸田延、という個性の強い辛口批評で、生徒たちは、ほとんどがかわいそうにコテンパンに書かれているのだが、それを少し差し引いて読んでも当時のコンセルヴァトワールの卒業試験のレベルはそれほど高いものではなかったようである。また、モーツアルトのレクイエムの合唱がひどい、これなら東京音楽学校の合唱の方がマシだ、とさえ言ってのける。

 R、シュトラウス自身の指揮のコンサートとか、ニキッシュ、モットルといった当時世界最高の指揮者のコンサートであってもかなり厳しい目で見ている。何でもかんでもヨーロッパは素晴らしい、などと思わないところが幸田延の面目躍如たるものである。しかしそういう勝ち気な性格がたたったのか、40才で東京音楽学校(現在の芸大)のピアノの教授の職を体よくクビにされてしまい、非常に悩んだところも赤裸々に描かれている。いまなら多分裁判沙汰になるところであろう。

 日記はドイツ語でかかれたものや、日本語のものがごっちゃになっているが、原文をそのまま残した上、詳細な訳文と注釈がある。
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