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即興演奏 [音楽全般]

アムステルダム音楽院教授のカールスト・デ・ヨング先生のワークショップが洗足学園であったので、即興演奏というものはどのように教え、教えられるものか興味を持っていたので顔を出してみた。
演奏に参加する学生は、ピアノ、ヴァイオリン、チェロ、フルート、電気ギターなど7、8名。

最初にまず、お互いがどのような音を出しているかよく聞くこと、という説明があり、調性、拍子、リズムなど無関係に、誰かが出す音に反応して、それにふさわしい音、もしくは対立する音を出して行く。これはそうむつかしい話ではない。言葉は悪いがデタラメでもなりたつからだ。しかし楽譜を基本として勉強してきた学生には「でたらめをひく」という発想も能力もないのが最初の印象ではあるが。。。

次は先生がピアノで、2小節づつ単位のメロディを単旋律で弾き、8小節程度のものを聞いて覚え、2小節づつ各楽器が連続して弾く、というもので、これは容易ではない。何拍子で、何調で、ということはあらかじめ知らされていないから全部聞き終わるまで、どのようなものかわからないわけである。簡単なメロディだから、一度聞いて書き取ることは何でもないし、全部書き終われば、何拍子か、何調かわかるし、リズムの区分けもわかる。ただ、一度だけ聞くだけで楽譜なしに構造を理解するのは私にもできない。学生ももちろん難渋したようで、何回か聞いてやっとわかってきたようである。

その次は、複合拍子の問題でこれはさらに難しい。これらを聞き取りながらフレーズの区分、どのような和声がつくか、など理解しなければならない。考えてみれば、三部形式のような簡単な形式であっても音楽を即興するためには最初のAの部分は自分が即興でひいたことを完全に覚えていなければならない。この時点で私にはもうお手上げとなる。ただベートーヴェンのような大天才はそれができたようで、即興であってもだいたい形式にのっとっていた、という記録もある。即興に抜群の記憶力が必要、という点では私などまず落第である。

しかし古来、大作曲家は即興演奏の名人でもあったから、教わらずともそういう能力は天性持っていたのに違いない。でもそのような記憶力がなくともとりあえず音楽を、あるスタイルの中で自分流に展開させて行くことなら私にもできるし、公の場ではない、私的な集まりではときおり披露してもいる。ピアノコンチェルトのカデンツなどを即興するのに形式は必要ではない。調性感がしっかりし、どこへ行ってももとの調性に即興で戻る転調能力さえあればいいのだから。これなら私にもできるのだ。ただ本格的な即興能力となると、上記のような訓練も必要となるのであろうが、もうこの歳ではいかんせん、私にはおそすぎる。

ただ若い学生たちにはこのような世界もある、ということを知ることは必要であろう。だが若い時、とりあえず自分の楽器を弾く能力を伸ばす必要がある時期、実際問題としてどこまでこの訓練に時間がさけるであろうか、という疑問は多少残る。
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