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クジラとフォアグラどちらが残酷か [プライベート]

どう理屈をつけるにせよ、人間は生き物を食べないと生きていけない宿命にある。イルカの追い込み魚が残酷だとして日本が「譲歩させられる」羽目になったその直後、フランス料理に使われるフォアグラの飼育方法が残酷だとして動物愛護協会から問題になったが、これは否決され、続けてもいいことになった(今朝の毎日新聞の報道による)。フランスは「伝統的な食文化が守られた」と威張っている。

クジラ、イルカについで多分動物愛護協会の俎上に乗りそうなのがクロマグロである。自然のものを摂るのは残酷で人工繁殖させたものは殺してもいい、というのも随分理屈に合わない。残酷,というなら,飼っていた牛を屠殺するために、屠殺機に追い込んで殺す現場をTVで見たことがあるが、残酷さという意味ではイルカと少しも変わらない。自然に生きるに任せるのと、人工的に狭い場所で繁殖させるのとでは動物にとってどちらが幸せか(動物が人間とおなじような幸福感を共有しているかどうかは疑問だが)こればかりは人間の価値観で測れるものではない。自然界で生きている動物は全部人間に食われるわけではないが、人工繁殖で育った動物はほぼ100%殺されて人間に食われる。

クジラが絶滅の危機に追い込まれたのは、日本が乱獲したせいではなく、そもそもは19世紀、パリなどの街灯の燃料にするために滅多やたらクジラを取りすぎたからそうなったのである。それを棚に上げて日本を非難するのも、原因を辿って行くと欧米文化が世界の基準という思い上がりが感ぜられる。現代のヨーロッパが素晴らしい緑に囲まれた美しい風景を満喫しているのも、16世紀以来、森林を完全に伐採し、丸裸になったのでペストやら、何やら疫病に悩まされてヨーロッパの全人口が1/3に減ったという苦い歴史に学んだ知恵なのである。

ヨーロッパ人とて最初から利口だったわけではない。嘘だと思うなら現代でも,例えばギリシャのクレタ島あたりを旅行してみるといい。この島も最初は緑に覆われていたのだが,いまは見る影もないことを少し注意深い旅行者なら見逃さないであろう。南ドイツあたりの羊の群れが丘陵地帯を放牧されているのどかな風景を見て日本人は感嘆するが、ローマ時代にはアルプスより北はすべて深い森に覆われていたことを知る人は多くない。その点、日本は終戦時の非常事態を除いては古来おおむね自然とうまく共存して来た。

とはいうものの、欧米基準が不愉快な日本人はピアノもメルクリンもメルセデスもフランス料理も全部やめてしまうわけにもいかない。グローバル化された現代、どう生きるにせよ、日本文化だけで生きられるものでもない。世界の様々な価値観を持つ人が、時間をかけ、気長に話し合ってどこか落とし所を見つけるしか道はないようである。
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