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北方領土問題 [一般向け]

安倍さんはプーチン大統領を日本に招待しようとしている。だがなぜ今なのか私にはよくわからない。北方領土4島をロシアが日本に返還するのは、平和的に考える限り「百年河清を待つ」であって、よほど世界の情勢が変わらない限り無理であろう。戦後のドサクサでソ連軍が突然参戦して侵攻し、不法に占拠したことで、本来日本固有の領土なのだから、という原則論は私にも分かる。北方領土問題はこれまで妥協のチャンスは何度かあった。でも日本はことごとく妥協案を無視して来たのである。いまの世界の動向を見るとロシアは領土問題に関して頑なな姿勢を崩すことはあり得ない。そういう客観情勢の中、なぜ「いま」なのか。

忘れてはならないことは日本は第二次世界大戦で完璧に負けたのである。戦争をして負けた方は何をされても文句の言いようがない。まして「無条件の降伏」だったのだから。3回にわたるポエニ戦争でカルタゴ帝国に勝ったローマ帝国はカルタゴ人をどのように扱ったか歴史を紐解いて見ると良い。第二次大戦後、日本が敗戦国としての取り扱われかたは、戦勝国側のさまざまのおもわくもあったが、ともかく日本本体の4つの島は残され、日本人は皆殺しにもされず、奴隷にもされず 、女性子供も売られず、曲がりなりにではあるが独立国家として扱ってもらえた。

それから70年、北方領土問題は現実問題、既成事実となっている。私に言わせれば歯舞、色丹あたりで妥協しておいてロシアと平和条約を結んでおいた方が、日露両国にとってどれほど得るものが多かったか計り知れない。特に中国の近年の振る舞いを見るにつけ、ロシアを取り込んでおいた方が日本にとってもロシアにとっても有利だったのではないか。しかし今となっては歯舞色丹すら無理であろう。唯一可能性のある方法は軍事的に奪い返すことであろうがこれは誰がみても現実的でない。

北方領土が仮に日本に帰って来たと仮定して、漁業問題以外に日本にどれほどのメリットがあるか。北海道の東を旅行して見ると分かるが、人口は減り、商店街はさびれている。北海道も一極集中型で札幌に移住する人は多いが、その逆、特に東の方に住みたいという人は多くない。その延長線上にある北方領土にはこれといった資源があるわけでもない。冬は酷寒の土地。せいぜいのところ温泉くらいで、ここに住みたいという日本人はそう多くはあるまいが、インフラの整備だけは莫大な金がかかる。

小林多喜二の代表作「蟹工船」を読んで見ると、あのころは千島列島全体がどこの国のものでもなく、ロシア人も住んでいたし、日本人も漁船の食料調達や、海が荒れた時の避難所として、自由に互いに平和的に利用していたようである。ロシアが千島列島を必要と考えるようになったのは、ロシアには不凍港となる場所が少なく、太平洋方面に自由に出られる不凍港の立地条件として北方領土にこだわるようになった。その戦略的意味はいまも変わっていない。領土問題に関しては日本もそう威張れたものでもない。日本人がもともとアイヌ人の土地を侵略して、北海道を自国のものとしてしまったのもそう遠い昔でもない。もともとアイヌ人の土地だから、日本は北海道を撤収して本州に戻るべき、と私がいったらみんな私を気狂いだと思うに違いない。が、実態はそうだったのだ。8年間札幌に通って北海道各地を旅行して回り、多少は北海道の歴史にも興味を持ったからこそ言える。ロシア人も北方領土についてそう思っているであろうことはことの正否はともかく、私にも想像はつく。


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